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38.記憶


 私は別なる世界に転移する。


 朝焼け空が目に入る。私は道端にいた。

 そしてそこで体が元に戻っていることに気づく。


 だが私にとってこれは何の意味もないこと。

 私は罪を犯したのだ。その事実は私が前世からこの世界に転移したとしても変わらない。

 私が娘に与えた恐怖。その事実も変わらない。


 私がこの世界で生きることに意味はない。それが私の結論。

 だが神の意図することが私の見解の外側にあるのだろうか?

 それは私への救済なのか更なる罰なのか分からない。だがその答えを探せということなのだろう。


 そして目を閉じ深く瞑想する。いくつかの疑問の答えを得るために。

 すると瞼の奥で文字が浮かび上がって来る。



・第一週:1日目

・Transcendentトランスエンデント ability:<逆流する時間>

・称号:なし


<以降は初回のみ表示する>

1.あなたは1週間毎に偉業を成す義務がある。

2.この義務の期限はあなた以外の転移者全てがこの世界から消えるまでとする。

3.一週間に複数の偉業を達成したとしても、翌週の偉業を成す義務へ繰り越すことは出来ない。

4.偉業を成すことに成功した場合<称号>が与えられ、以降ここで確認することが出来る。

5.偉業の獲得方法として、他の転移者を殺せば無条件で<転移者殺し(Name)>が与えられる。

6.その他獲得方法として、有名になること、生物を殺すこと、発明すること、etcで与えられる。

  上記の裁量として百の運命に変化を与えたか、又はこの世界で未だ成されていない出来事を実現したかを基準とする。


 内容を理解すると同時に私は神に不信感を抱く。

 なぜ前世で悲惨な経験をした者達にこの世界でも悲劇を繰り返させるのか。その意図が全く分からない。


 ただ真実を知るために私に与えられたものがあるならばそれを知ろう。


 そうしてTranscendent ability:<逆流する時間>の意味を考える。

 文面だけから推察するならば時間に関係する能力なのだろう。それが逆流する?意味が分からない。


 ならば試してみよう。

「<逆流する時間>発動」





 能力を試してみよう。そう思った瞬間、私はふと空が変わっていることに気づく。

 朝焼け空から太陽が真上まで昇っている。

 これは私の能力と関係しているのか?わからない。

 もう一度試してみよう

「<逆流する時間>発動」





 もう一度試してみよう。そう思った瞬間、また空が変わっていた。

 太陽が真上から夕焼けの位置まで移動している。


 まだ私は能力を一度も使っていない!!使おうと思っただけで空が変化しているのだ。

 何かがおかしい。まるで私が能力を発動しようとした瞬間、時間が進んでいる様な……

 逆流する時間。この能力名と実際の現象が異なる。


 疑問を持ったまま私は夕焼け空を眺める。ただそこには綺麗なオレンジ色の空と紅の太陽があった。

 その時、私は気づく。

「天動説と地動説」

 ああ、私は運がいい。無事に気づくことが出来た。


 地球の地面に立つ人間視点では太陽が動いて見える、だが実際には地球が動いていたのだ。

 私の能力もこの現象に酷似しているのではないか?

 この能力は私以外の時間を進めるのではなく、私自身の時間を巻き戻している。それは“記憶”までも。

 だから能力を発動した私は記憶が巻き戻る。そうして何度も同じ行為を繰り返すのだ。

 それはいつしか太陽の位置の変化という形で私に気づかせてくれた。



 私は実験することにした。

 地面から小石を二つ手に取る。

 一つを地面に置く。そして私はその石から距離を取る。

 その場所から私は手に持つ石で地面に置いた石に向かって投げる。


 投げようと思った瞬間だった。狙いを定めていた石が無くなっている。

 それにも関わらず私は手元に石を持ったままでいる。


 これで分かった。この能力は私の記憶と行動を巻き戻している。

 能力の発動前にインターバルを設けよう。これにより発動のループはしなくなるだろう。


 ああ、私はこの能力を理解するのに丸一日も使ってしまった。

 私は今道のど真ん中にいる。どちらに向かえば何があるかも分からない。

 だが進むしかないだろう。たとえ夜になったとしても歩き続けなければならない。



 一晩中歩き続け、朝日が昇り始めた頃。私は一つの町に着いた。

 私が向かう先は宿。歩き疲れた体を休めたい。



 今私は宿のベッドに腰掛けている。寝る前に少し考えたいことがある。


 町で私は、人と会話することと“文字を読む”ことが出来た。


 だが会話と文字を読む。この二つには違いがある。

 人との会話は難なく行えたのに対し、文字を読む行為は時間が掛かった。

 それは難易の違いでしかない。だがなぜ違いがある!?


 その理由を探る。

 その答えは記憶にあった。私はこの世界の文字を勉強した記憶がある。

 それも時間を掛けて必死に勉強したんだ。

 だがおかしい。前世に多数存在する文字とこの世界の文字に共通点は全くない。

 いつ私が勉強した?なぜ私が勉強出来た?


 そうして辿り着く。真実へと。

 これは私の記憶ではない。前世のあの焼却炉で混ざり合った記憶なんだ!!

 この世界に転移し敗北した者達。つまり私はその者達の記憶を持っている。


 そうして私は思い出す。

 これからこの世界で転移者が発端となり起こる出来事の全てを。


 この世界で私がやらなければならないこと。それを理解した瞬間だった。




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