36.仲間
ツーフラワーは安堵する。そして誰もいない玉座に座る。
私にとって全ての戦いが終わった。今私が生きているのはハヤトのお陰だろう。
「ハヤトありがとう」
ハヤトはツーフラワーに近づき跪く。
「ありがたきお言葉」
ツーフラワーは帝国と王国の二つを同時に管理する必要があった。だがハーモニー王国の主要人物は全員死んでいる。
「ハヤト、私はこの城に長居することが出来ない身だ。
だからこの玉座に私の代わりに君が座ってくれないか?」
ツーフラワーにとって唯一の、仲間、命の恩人、だからその言葉が出るのは自然なことだろう。
その返答は。
「ツーフラワー様、頬に血が付いております」
ハヤトはふちに赤い糸で刺繍のされた白い布を差し出す。
ツーフラワーはそれを受け取る。そしてハヤトと手が触れた瞬間、疑問に思う。
戦闘時私は常に霊体化している。だから血飛沫が付着する筈がない。
とするならばハヤトの言葉は嘘になる。なぜハヤトは私に嘘をついた!?
ツーフラワーはその答えを導き出すと同時にその場を離れようと試みた。
だが玉座にから立ち上がることすら出来ない。まるで縫い付けられている様に。
彼女はハヤトの顔を見る。そこにあるのは無表情。
そうしてハヤトは話し出す。
「あんたの能力は不死身に近い。おそらく転移者の中でも1,2を争う程強力な能力だっただろう。
だが俺はあんたの体を縫い付けた。その椅子から動けないんだろ?
さてこれから不死身な能力を使ったとしても、飲まず食わずそれで生きて行けるんだろうか?
そして偉業を成す義務はこれから達成出来るんだろうか?」
その言葉はツーフラワーに自身の状態が“詰み”であると理解させるには十分なものだった。
「仲間だと思っていたのに……」
「俺も都合のいい仲間だと思っていい様に利用させて貰いました」
「クソ……殺してくれ」
ツーフラワー数えきれない悲しみを背負ってその言葉を吐いた。
その言葉でハヤトもナイフを構える。
「最後に一つだけ君に忠告しておく。転移者は全員前世に共通点が――」
その言葉が最後まで発生られることなくツーフラワーは喉元を切り裂かれた。
ツーフラワーが死に逝く間際に思ったこと。
私はこの世界でも使命を全うすることが出来なかった。私は何のために生まれたのだ……
そうして彼女は息絶える。
残されたハヤトは倒れている女性の元へ近づく。アフロディテは既に冷たくなっていた。
「一度助ける。そう誓ったのに出来なかった」
ハヤトはただ茫然とアフロディテを眺める。
「ああ、あと何回こんなことすればいいんだ、あと何人転移者はいるんだ!?」
その時突然、玉座の広間の入り口に一人の白髪混じりの中年男性が出現する。
「間に合ってよかった。初めましてハヤト=タチバナ」
「なぜ俺の本名を知っている!?」
第三章 完




