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34.邂逅


 第三週:2日目


 ツーフラワーはレーテ川を渡り終わった。そして王都ベルの入り口に立っている。


「私の名前はツーフラワー=マーリン。

 この国の王から権力を奪い、この世界から格差を無くす人間だ!!」

 彼女は当然の様に、自らの名前と、自らの目的を堂々と宣言した。

 そして今まで通りその言葉に誰も反応しないであろうと思っていた。


「俺を助けて下さい!!俺はこの国の格差に耐え切れない」

 一人の青年が彼女の言葉に呼応するように出てきた。彼女の思いに同調する存在が近くにいたのだ。

 

 ツーフラワーは喜んだ。

 この世界に私と同じ気持ちを抱いている人がいる。それは私を強くする。


 それと同時に彼女は目の前に出てきた青年の苦悩を知りたいと思った。

「あなたは何に耐えていて、何を助けて欲しいのですか?」


「俺は奴隷だ。今は契約主から命辛々逃げている。

 もし主に見つかれば俺は殺されるかもしれない。それでも俺にはやるべきことがある。

 俺にとって大切な人が城の牢獄に監禁されているんだ。その人を助けたい」


 そう言って青年は胸元の隷属魔法陣を彼女に見せつける。


 ツーフラワーは目の前の青年の魔法陣を見て胸を痛めた。それと同時に思い出す。

 今まで私は一人で戦って来た。だから大切なことを忘れていた。

 私にこの世界が残酷であると教えたもう一つの言葉。それは奴隷。

 この世界には奴隷が存在する。奴隷とは格差の最たる象徴。

 それも無くさなければならない。

 彼の思いは私の意思を強くする。その恩を返す形で私は彼の苦悩を和らげてあげなければならない。


「あなたの名前は?」

「俺の名前はハヤト」


 それはハヤトとツーフラワーが邂逅した瞬間。




 時を同じくして。ここは王城。

 その玉座にはフレアが座っている。


 彼女の目の前に一人の青年が現れる。その青年を見てフレアは疑問に思う。

 なぜこの青年は私を見てもなんとも思わない?この国の国王がいつの間にか代わっているというのに。

 

 彼女は側近の者に尋ねる。

「あいつは誰だ?」

「彼の名前はスティング=ブラッド。元六代目剣聖でございます」


 その解答は彼女の疑問を正確に解決するものではなかった。だから本人に質問する。

「スティング=ブラッド、お前はなぜここに座る私を見て疑問に思わない?」


 スティングは既に取り付かれているのだ。


「あんたが誰だろうと、この国の頭が代ろうと、俺には関係ない。

 俺は大切なもの全てを奪われた。俺から奪った人間が今のうのうと生きている。

 そしてそいつはこの城に必ず現れる、俺はそいつを殺す!!

 だから見ず知らずあんたにも従うよ」

 それはスティングの悲しみの末にたどり着いた覚悟。


 フレアはその言葉を聞いて思い出す。

 おもしろい、彼は前世の私に似ている。彼を好きなようにさせてみよう。

「ならばお前の目的を私が手伝おう。この城に出入りする許可を与える」


「ありがたき幸せ」

 スティングはそう言って跪いた。




 その日の晩。

 王都の酒場に二人の人間が向かい合って酒を飲んでいる。

 そこにいるのはハヤトとツーフラワー。


 ツーフラワーはハヤトにこの世界を王権主義から民主主義へと変えるその方法を語っていた。

 

 ツーフラワーはハヤトに対してその話の最中一つの疑問を持つ。

 彼は民主主義その内容を聞いて感激した。

「格差の無い世界。なんて素晴らしいんだ。

 俺は協力します。あなたの革命を」

 彼は聡明だった。民主主義その内容を説明すると私の考えに同調するように賛同した。

 彼は奴隷という最底辺にいるのだ。なぜ彼の様な人間が奴隷になってしまうんだ……


 それと同時にツーフラワーは決意する。

 この世界には自浄作用が存在するかもしれない。私がこの世界から権力者を無くせば、彼のような自ら考え自ら行動する人間が、この世界を前世よりもっと良いものに変えてくれる筈だ。


 明日王城に突入する。二人はその場で話し合った。

 ツーフラワーにとってハヤトは奴隷であり無力な存在。だからこそ強く思う。

 彼にこれから私が行う全てを見てほしいと。そして彼の大切な人を助けてあげたいと。




 第三週:3日目

 フレアは気づいている。そしてその表情から不快感を隠せずにいる。

 昨日都心にて何者かがこの王城に攻め込んで来ると言い振らしていたのを。そしてその人物の名前に聞き覚えがある。


 心に深く刻まれた名前。その名前をフレアは一生忘れることはないだろう。

 だがその名前の本当の持ち主がこの世界にいる筈が無い。そう確信している。


 私を不快にさせたことを後悔させてやる。そのためにこの城で待ち受ける。

 三百の兵士。この数の暴力でそいつを圧殺する。

「早く来い!!」




 城門の前にハヤトとツーフラワーは立っている。そこには不自然な程に人気がなかった。


 ツーフラワーにとってそんなことは関係ない。

「行くぞ、ハヤト!!」

「はい!!」


 その掛け声と同時に二人は城内へ駆け込んだ。




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