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31.孤独


 私の名前はフレア=マインド。

 とある欧州諸国の一つの村で生まれた。


 家族は両親と祖父、兄と私の五人。

 そこは農村で私達は農家だった。


 幼い頃の私は孤独だった。

 その村に子供は少なく同い年の子は一人もいなかった。

 兄と私の年は近かったが、兄は運動が得意で、私は運動が下手だった。

 だから自然に、兄は外で、私は家の中で遊ぶ様になっていた。

 

 両親は毎日、農作業のため外に出ていた。

 だから私はいつも家の中でひとりぼっち。それがちょっぴり寂しかった。

 私の家には大きな庭があった。そこには多くの種類のお花が植えてある。

 毎日お花にお水を与える。それが私の日課。

 お水と一緒にそのお花に話しかけるの。


「今日は天気がいいね。綺麗な花が咲いたね」

 その行為が私の寂しさを和らげてくれた。


 そんなある日、祖父が農作業中に足を骨折した。

 ひとりぼっちだった私の毎日が終わり、いつも祖父がいてくれるようになった。


 祖父は優しかった。

「いつも寂しい思いをさせてごめんね」

 今まで農作業をしていて、子供が何をして過ごしていたのか知らなかったのだろう。初めて私と祖父の二人だけの時間が来た時、祖父は私の気持ちを理解して謝ってくれた。


「そんなことないよ、おじいちゃん。もうひとりぼっちじゃないから」

 祖父の足の怪我は不幸なこと、だけど私は時間を共にしてくれる家族が増えて嬉しかった。


 そんな祖父が私のために一緒に遊べるものを提案して来たのは自然なことだろう。

 それはチェス。祖父は長年使われることのなかった木製の黄ばんだチェスを倉庫から出してきた。


 幼い女の子に難解なチェスで一緒に遊ぶ。今になれば祖父は女の子の気持ちを分かっていないなと思う。


 祖父はチェスのルールを分かり易く教えてくれた。私が駒の動きを忘れても嫌な顔せず何度も教えてくれた。

 私もひとりぼっちが嫌で必死にルールを覚えた。でもはっきり言ってチェスは難しかった。

 こんなものつまらないなー。それがいつもの私の心の声。

 それでも祖父の興味を私に向けさせたくて我慢してチェスをした。


 人間とは慣れる生き物なのだろう。

 それから数か月後、つまらないから楽しいに変化する。

 私はいつの間にか時間を忘れて熱中する様になっていた。


 そしてある日を境に、祖父は手加減をしなくなった。その日から私は一度も勝つことが出来なかった。


 祖父は頑固な人だなと思う。それで私も意地になった。

 何としても勝ちたい。そう強く思ってずっとチェスのことばかり考えていた。


 でもその思いが実現することは無かった。祖父は急死したのだ。


 私は何度も泣いた。またひとりぼっち。寂しいよ!!

 今まで当然の様にあったものが突然いなくなる。それは私に深い悲しみをもたらした。


 悲しみを克服出来ないままに私の元へ孤独な時間が訪れる。

 私は意味も無くチェス盤を広げた。


 ああ、おじいちゃんがいないと好きなチェスも出来ないんだ。


 それでも駒を初期配置に並べる。初手は私、駒を一つ動かした。

 そのまま長時間待った。

 おじいちゃんが動かしてくれる筈。そう信じて。


 そんな無意味な時間の中で私の脳裏に一つのイメージがよぎる。おじいちゃんなら次にこう動かすだろうな。

 私はそれに従って駒を動かす。そうして私も自分の駒を動かす。

 するとまた脳裏にイメージが……

 それが途切れることはなかった。


 私はポロポロと涙した。

「おじいちゃんは私の心の中で生き続けてくれているんだ」




 それから私は成長し14歳になる。

 もっと強い相手と遊びたい。その思いからチェスの大会に出場した。

 そして誰にも負けることなく決勝戦まで勝ち進んだ。


 相手はツーフラワー=マーリンこの国の王女様。


 試合の前の控え室で私は付き添いの母から言われた。

「フレアちゃん、お願いがあるの。

 わざと負けてあげて。そうすれば優勝賞金よりも、もっと沢山のお金が貰えるのよ」

 

 私にとってチェスは特別な存在。だから負けたくない。

 嫌だ嫌だ嫌だ!!心の中で叫んだ。

 でも私が負ければ母が喜んでくれる、我慢するだけで家族が幸せになれる。

「分かった」

 私の心の中に黒い何かが生まれた。それを押し込んで私は頷いた。

 


 そうして彼女と対面する。

 お人形さんみたいに綺麗な女の子。王女様を一目見てそう思った。


 そして負けるための試合が始まった。

 彼女は強かった。今まで遊んだ誰よりも。

 最後には負けるけど、少しくらい楽しんでもいいよね。そう思ったのが間違いだった。


 私はいつの間にか熱中してしまった。そして勝利した。


 これで優勝だ。私は喜んだ。

 その瞬間思い出す。そして唇を噛みしめる。

 あっ、約束を破ってしまった……


 私は怖くなった。取返しのつかない失敗をしたこと、王女様を怒らせたことを。


 優勝トロフィーを貰うために私は壇上に上がる。そこにいたのは王女様。

 そうして私は見てしまう。


 彼女な自然な笑顔が作り笑いに変わっていく不気味な姿を。

 私は戦慄した。




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