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03.授けられたもの


 俺がもう一つ神に授けられたもの。

『Transcendentトランスエンデント ability』これは直訳すると『超越した能力』

 神の力の一部を授けると言っていた。それは人の能力の限界を超えた力ということ!?


 では<無限の摩擦力>これはどういう意味だ!?

 摩擦力これは分かる。物と物を擦り合わせた時、擦るのを止めさせようとする力。

 物質の表面が、つるつるした物と、ざらざらした物とでは違う。例えば氷上と砂の地面では摩擦力が異なる。

 アイススケートは氷上の摩擦力が小さいことから、軽く長く速く滑ることが出来る。


 この摩擦力が無限になる!?

 それは物理法則を捻じ曲げるということ。意味が分からない。


 分からないなら試してみよう。自分の手のひらで。


 俺は両手を合わせて合掌する。そして口に出して言う。

「<無限の摩擦力>」


「何も起きないじゃねーか」 

 何もない、光も音も発生しない。ただ俺の両手がそこにあるだけ。

 俺は落胆しつつ両手を離そうとした。


 その時……

「んぐぅ!!」

 合わせた手と手が離れない。俺自身の全身全霊の力をもってしても……

 

 当然の様に俺は焦る。このまま離れなくなったらどうしよう。

「頼む、離れてくれー!!」

 声に出して必死に願う。


 するとあっけなく両手が離れた。


「ふぅ~よかった」

 一安心する。もう少しで両手が使えない惨めな人生になるところだった。



 これらの経験を踏まえて俺はこの能力について何となく理解した。

 摩擦力が無限になる。それはつまりくっついた物が離れなくなるということ。

 そして無限とはどんな強力な力を加えても離れない。それが絶対であるということ。

 

「正に超越!その名に相応しい能力」

 俺は鳥肌が立った。


 この力を使って俺は、偉業を成し、他の転移者を殺すことになる。そのためにこの能力をより深く理解しなければならない。


 更にいくつか実験をしてみることにした。


(実験1)

 俺は左腰から鞘と小剣を取り出す。そして鞘からゆっくり小剣を引き抜く。

 刃こぼれ一つない綺麗な小剣だ。ただ鍔や柄からどこか安っぽさを感じる代物。

 その後小剣を鞘に納める。今度は心の中で念じる<無限の摩擦力>

(結果成功)予想通り鞘から抜けない小剣が出来上がる。


(実験2)

 近くの木の枝とその剣に<無限の摩擦力>発動。これで木に対し逆さまの剣がくっついた。

 俺はその木から離れる。十分に距離が離れた所で<能力解除>

(結果成功)鞘から小剣が地面へ抜け落ちる。

 次にもう一度<能力解除>

(結果成功)木から鞘が落ちる。


(実験3)

 拳大の石を2つ拾う。それを地面に積み重ねる様に置く。

 そこから離れて<無限の摩擦力>発動。

(結果失敗)近づいて石に触れてみると石と石はくっついてない……


(実験4)

 自分の右足と地面に対して<無限の摩擦力>発動。

(結果成功)右足は地面と離れない。



<無限の摩擦力>の実験結果を箇条書きでまとめる。

1.接触した物質と物質をくっつける性質を持つ。

2.発動には俺の体の一部が対象物と直接触れなければならない。

3.多重発動可能。

4.既に能力が発動した対象物は体から離れても効果は持続する。

5.解除は対象物から距離が離れていても可能。

6.多重発動している場合、個別に指定して解除可能。


7.地面に人間を縫い付けることが可能。


 7番これは意味不明だ……

 実験4にて俺は自分の右足と地面に対して能力の発動を試みた。その結果は地面から足が離れないというものだ。

 右足と地面という簡素な表現をしているが、実際には右足→靴→地面の砂となる。

 この能力が、右足、靴、地面の砂全てに発動したという結果の捉え方も出来る。だが“靴と地面の砂”ここがおかしい。

 例えば、雨でぬかるんだ土の上を靴で歩いた時や、積雪日に雪の上を靴で歩いた時どうなる?

 答えは靴の裏に団子状に土や雪がくっつく。それだけだ。


 なぜ俺の能力はそうならない?靴の裏に砂がこびり付いてでも持ち上がるのでは?

 

 原因や理由を探すならば……

 俺が右足と“地面”を対象物としてイメージしたからだ。

 そう地面という曖昧なものを。そしてその曖昧なものが能力の発動対象になるということ。



<無限の摩擦力>この能力の本質は。

 言葉通り無限のエネルギーを内包する。そして曖昧でもある。


 俺は連想してしまう。『無限』と『曖昧』という言葉から“神”を。

 これは本当に神の力だ。


 俺はこの能力で敵対者を地面に縫い付け、又は拘束することを主とした戦い方になるだろう。

 皮肉なものだ……前世で俺自身が刑務所に拘束されていたのだから。



 俺は嵌められた。日本経済を裏で操っている者達、そして本当の犯人に。

 都合のいい様に利用された俺には、自己防衛、行動予測、事前準備、知識その全てが不足していた。だからターゲットにされた。


「同じ轍は絶対に踏まない!!」

 

 今のうちに考えろ、最悪状況、最終局面を……


 果たして俺だけなのか。俺だけ神の力を授けられたのか?

 瞼の奥に浮かび上がるTranscendent abilityこの文字、そしてこの意味。

 それは転移者全員が授けられているということ。そして人によって能力は違うんじゃないのか!?

 更に“神の力”これは、等しく、平等に、釣り合いの取れたものになっているのか!?

 否、状況によって有利不利は必ず生じる筈。

 楽観視する場面じゃない、想像しろ!!


 その時思い付く最悪を……


『時間停止』


 体から血の気が引いていく。




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