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26.不足


 私は飛び降り自殺を計った。しかし生きていていた……



 特別な医療処置を受けた者は後にトロル症候群という病気になることが判明する。それは空想上の怪物“トロル”から引用され名付けられた。


 トロルとは死んでも蘇る。


 死んだ細胞が蘇る、それと同時に細胞分裂が止まらなくなる。それは体の膨張や変形、四肢の分裂や変異を意味する。

 日々刻刻とその身体的な異常は増えていく。多くの者達は日常生活をすることすらままならずになった。

 数え切れない程の命が絶望し自ら死を選ぶ。


 自ら死を選択した者にとって本当の絶望。それは死んでも蘇る。

 生きているだけでも辛いだから死の苦痛を受け入れる。それにも関わらず蘇ってしまう。

 

 ただし人によって個体差はあった。回数を重ねることで死ぬことが可能になる者もいた。



 私は脳が破裂し四肢が粉砕する痛みを味わった。それでも生きていた。

 そして例の如く体が変異していった……

 


 長い時間を掛けて私は死と蘇生を繰り返す。その途方もない時間は私の理性をゆっくりと狂気に染めていった。

 生きる意味を持たない心、生活することも死ぬことも出来ない体。


 私は何のために生まれて来たの?ああ、誰でもいいその答えを教えてよ!!


 それはチェス盤の最終局面“チェックメイト”が宣言される様にして訪れた。

「生物に等しく訪れる死よりも更に“過酷な苦痛”を肉体に刻まれる者達よ」

 美しく明瞭な声が響き渡った。



 そうして私は別なる世界に転移する。



 気づいた私は道端にいた。そうして自身の体を見渡す。

 そこには確かな私の体が存在していた。

「ああ、神よ。あなたを唯一神として心からお慕いします」

 私はその場で跪き感謝の気持ちを言葉で述べる。



 そうして目を閉じ深く瞑想する。いくつかの疑問の答えを得るために。

 すると瞼の奥から文字が浮かび上がって来た。


・第一週:1日目

・Transcendentトランスエンデント ability:<完全なる透過制御>

・称号:なし


<以降は初回のみ表示する>

1.あなたは1週間毎に偉業を成す義務がある。

2.この義務の期限はあなた以外の転移者全てがこの世界から消えるまでとする。

3.一週間に複数の偉業を達成したとしても、翌週の偉業を成す義務へ繰り越すことは出来ない。

4.偉業を成すことに成功した場合<称号>が与えられ、以降ここで確認することが出来る。

5.偉業の獲得方法として、他の転移者を殺せば無条件で<転移者殺し(Name)>が与えられる。

6.その他獲得方法として、有名になること、生物を殺すこと、発明すること、etcで与えられる。

  上記の裁量として、百の運命に変化を与えたか、又はこの世界で未だ成されていない出来事を実現したかを基準とする。


 私は一通り文面を読み終える。


「足りない、最も重要な部分が不足している」

 私以外にも転移者が存在しそれらと殺し合いをする可能性があることは理解出来る。

 だがなぜ私が転移者に選ばれたのか?なぜこの世界なのか?その答えがここには存在しない。

 私が生きるためには、その答えを探さなければならない……


 そうしてもう一つTranscendent ability:<完全なる透過制御>この意味を考える。

 透過とは物質を通り過ぎることを意味する。

 それが完全であり制御出来る!?さっぱり分からない。


 ならば試してみよう。

 私は右手で左腰にある小剣を引き抜く。そして<完全なる透過制御>発動する。

 

 見た目による変化は全くない。だから左手で刃に軽く触れる。

 そうして気付く。小剣に触れることが出来ない。

 より正確に表現するならば、左手で小剣に触れることは出来る。しかし触れても通り過ぎるのだ。

 まるで視覚的に認識出来るが物質として存在しないかの様に。


 例えるならば見える携帯電話の電波とでも表現しよう。

 電波は室内でも屋外でも届く。それは電波が壁面や屋根を透過しているからだ。

 私の能力の効果もこれに近い。本来透過することの出来ない物質を透過出来る物質に変化させる。


 すると一つの疑問が発生する。

 なぜ私はこの小剣を持つことが出来ている!?

 左手は刃に触れると透過するのに、右手は柄を持ち更に動かすことまで出来る。

 

 右手で柄を持つことが出来る。ここがおかしい。


 対象物質が透過する性質“だけ”を持つ能力であれば、私の右手は小剣の柄に触れることすら出来ない筈だ。

 小剣は重力の影響を受ければ落下し地面の奥深く落ちていく、重力の影響を受けなければ浮遊するだけだろう。

 この時点で既に分かることとして小剣の重量がまるで無い。つまり透過した物質は重力の影響を受けないということだ。


 私は小剣を右手から左手へと持ち替える。すると左手でも小剣の柄を持つことが出来た。

 ではこの能力が小剣の刃にのみ対象となり柄は対象外となったという考え方も出来る。だがそれでは疑問の解決にはならない。

 刃と柄はなぜ繋がっている?刃は透過し、柄は透過しないのだから、その二つは切り離されるのではないか。


 原因や理由を探るとするならば……

 私の能力には二つの性質がある。

 一つ目は物質に透過という性質を付与する。以降この物質を“霊体”と呼ぶ。

 霊体の対になる言葉として現実世界に存在する一般的な物質を“現体”と呼ぶ。

 二つ目は霊体と現体の双方に干渉出来る物質。“相互干渉体”とでも呼ぼう。

 小剣においてこの様な考え方を適用したならば、刃は霊体、柄は相互干渉体が付与されたと捉えることが出来、疑問は解決する。


 この能力の個人的見解。それは霊体と相互干渉体の二つを同時に付与するというもの。


「ハハハ……この能力を自身に付与すれば私は無敵だ。

 銃も剣も全て透過する。転移者と戦闘になった場合においても絶対死ぬことはあり得ない」

 

 笑いが止まらない。




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