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02.始まり


「うっ……まぶしい」

 オレンジ色の光が少しずつ強くなり俺は目が覚めた。空には朝焼けが広がっている。

 この場所は左右に森林、前後に色白の土が敷き詰められた道がある。

 俺は道端に大の字で仰向けに寝ていた。


「ああ、ここは外だ」

 俺は3年間刑務所で過ごして来た。

 建物の外に出る、綺麗な朝焼けを見る。平凡で当たり前のことそれが今まで出来なかった。

 だから、嬉しい、嬉しくない訳がない。


「すぅ~はぁ~」

 乾燥し透き通る空気を味わって吸い込む。美味しい。

 自然豊かな香りを吸い込む。安心する。


 誰もいない森の中一人でいれば寂しくなるかもしれない。でもそれ以上に俺は今幸せだ。



 幸福の余韻に十分に浸った後、俺は現状の確認をすることにした。

 まず俺の服装が変わっている。

 囚人服からボロボロのシャツとズボンと靴。そして革鎧、その上に茶色のフード付きクローク。

 その他に、左腰に小剣と鞘、右腰に拳大の革袋。革袋の中身は銀貨9枚、銅貨10枚。

 ズボンのポケットに、手の平大のクッキーと、飲み水用の水袋


 神は言っていた。生きるのに最低限必要なものは授けると。

 だから服装や硬貨の入っている革袋があるのは分かる。だがなぜ小剣と革鎧を身に着けているんだ?

 それは生きるのに最低限必要な物だから。剣を武器として使い、鎧で身を守れと。

 つまりこの世界は、戦い、争い、奪うことが当たり前の様に存在する。前世より文明の遅れた世界なのか……


 ふと今俺がいる場所は安全か!?という疑問が噴出する。

 急いで回りを振り向く。何者かの視線、不自然な音や影がないか確認する。

 さっぱり分からない。それはそうだ、平和ボケした人間が誰かに監視されて気づける訳がない。

 ましてや俺は刑務所にいた。なおさら鈍感だろう。


 こうしてはいられない。では前後どちらかの道に進むか?

 この道は直線。道先の遠くを覗いても、どちらもただ地平線まで道が続いているばかり。

 その先に何があるかも分からない状況で進むのは危険。食料が持たないかもしれない。


 留まるか、進むか、どちらがよいか……


「ハッ」

 俺は気づく。ここは未知の世界なんだ。

 日本みたいにノーリスクで安全な場所があるかさえ分からないんだ。覚悟を決めろ、リスクを背負え、自分の考え方を変えろ!!


 俺は道の土を良く見てみる。当然の様に、人の足跡、馬の蹄、車輪跡がある。

 ここは人が適度に通る道だ。誰か人が通った時、道先を尋ねればいい。


 それまでここで待機。

 時間が掛かってもいい。疑問は沢山ある自分の中で考えをまとめていよう。


 俺は背もたれに丁度良さそうな木を探して腰掛ける。

 そして目を閉じ瞑想する。神が言っていた疑問の答えを求めるために。

 目を閉じ集中すると、それは瞼の奥で文字として浮かび上がってきた。


・第一週:1日目

・Transcendentトランスエンデント ability:<無限の摩擦力>

・称号:なし


<以降は初回のみ表示する>

1.あなたは1週間毎に偉業を成す義務がある。

2.この義務の期限はあなた以外の転移者全てがこの世界から消えるまでとする。

3.一週間に複数の偉業を達成したとしても、翌週の偉業を成す義務へ繰り越すことは出来ない。

4.偉業を成すことに成功した場合<称号>が与えられ、以降ここで確認することが出来る。

5.偉業の獲得方法として、他の転移者を殺せば無条件で<転移者殺し(name)>が与えられる。

6.その他獲得方法として、有名になること、生物を殺すこと、発明すること、etcで与えられる。

 上記の裁量として、百の運命に変化を与えたか、又はこの世界で未だ成されていない出来事を実現したかを基準とする。



 目を閉じただけで摩訶不思議な現象が起きたことよりも情報量の多さに軽く混乱する。

 

「ただ、一つだけハッキリさせなければならないことがある……」

 今俺がここにいる理由は?

 前の世界で俺は辛い日々を過ごして来た。それは3年前から転移する直前までずっと。

 そしてあのままの未来では今まで味わった苦痛より更に辛い体験をすることになるだろう。


 あの時あの瞬間。俺は、助けられた、願いが届いたそう思った。

 だけど神から転移の話を聞いた時、胸の奥深く、その更に奥底で何かドロッとした妙な気分を感じた。

 俺はそれに気づきたくなかったし、気づかぬ振りをした。


 だが……

 俺がこれからこの世界で、前に進み、生きて行くためにはそれに触れなければならない。


 さっき俺は道を留まるか進むかで覚悟を決めていた。そんなものあまりにも小さすぎた。

 より強大な覚悟が必要だ……


 その本質を理解しろ。そのために口に出せ!!

「俺は救われたんじゃない。これは……これは……“人殺しのゲーム”だ!!」

 

 でも、助けられなかった、願いが届かなかった訳じゃない。俺がこの世界で幸せ暮らせる可能性は僅かに存在している。

 あの世界で何の抵抗も出来ないまま生かされるより、自分の力でこの世界を生きて行く。その願いを叶えたい。

 たとえそこに俺の身の丈に合わない大きな壁が立ち塞がっていても。

 チャンスは与えられた。それはとても幸福なこと。



 この世界で死ねば前世の牢獄に引き戻される。

「それは絶対に嫌だ!!」


 俺以外にも転移者はいる。それは、神の話し言葉が複数形だったこと、瞼の奥の文字の内容からも明らかだ。

 他の転移者は何人いる!?分からない……


 何人いても俺以外の転移者は全員死ななければならない。

 前世に、引き戻されないため、生き残るためやるべきことがある。そのために……


「俺は障壁となる全ての人を殺す!!」


 その時俺自身に変化が訪れた様な気がした。

 吹いていたそよ風が強風になった様な……宙を舞っている木の葉がゆっくりになった様な……




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