13.潔さ
そしてTranscendent ability:<完全なる光彩の消失>この能力について考える。
結論。考えても分からない、なら試してみよう。
私は左腰にある小剣を手に取り<完全なる光彩の消失>発動する。
その小剣は変化する。形はそのままにどす黒く染まる。
ギョッとする。それが私の反応。
見ているだけで吸い込まれそうになるその物質に私は拒絶反応が出た。
そして私はこの能力を漠然的に理解する。おそらくこれは能力名の通り対象に当たる光を消失させているんだ。
人間が物を見る仕組みは、物質に反射する光を網膜で受け止めることで色や形を認識している。
例えばブラックホール。それは光でさえも飲み込む吸引力を持っているために、人間が視覚的に認識することが出来ない。
私の能力もこれに近い。物質に当たる光を吸収ではなく消失させている。
だから同様に視覚的に認識出来ない。
いくつかの実験を重ね私は能力の本質を理解した。
これを踏まえて私に出来る偉業。それは殺し合いか虐殺。
一週間以内に他の転移者を探す、その確率は低いだろう。ならば虐殺。
そのために対象となる村や町を選定する必要がある。それらの情報を集められる場所へ私は行かなければならない。
第一週:4日目
私はフルートの町、その作業区にいる。
日が沈みあたりが暗闇に覆われた頃。私は動き出す。
さぁ、虐殺の始まりだ。
私にとってそれは造作もないことだった。一人の逃亡者も出すことなく速やかに終わった。
私の技術と能力。これによりいとも簡単に人を殺すことに成功する。
罪悪感など全くない。私が前世で受けた苦痛に比べたら彼らは楽に死ねるのだ。
第一週:5日目
日付が変わったのだろう、それでも私は終われない。次は居住区。
そうして私は居住区でも人を殺す。それは作業の様に。
その最中私の頭上からファンファーレの音が鳴る。
私は瞼の奥を確かめる。そこには。
・称号:<虐殺者(フルートの町)>が追加されている。
偉業を達成したとしても目撃者を一人として残す訳にはいかない。だから私の作業は止まらない。
住宅の中には女性や子供が隠れていた。もし彼女らが私の存在を視認することが出来ていたなら、さぞ恐怖しただろう。
だが私はその恐怖を与えずに殺す。それは私にとって優しさ。
それが最後の住宅。私は当然の様に中に入り、隠れている少年を殺す。
ああ、やっと終わった外に出よう。
出口の扉のドアノブを捻った、その時違和感が。それはドアノブの裏を人が触れている様な。
私は慌ててそのドアノブのから手を放す。しかし離れない……
どんなに力を込めても離れない。
『転移者』私はこの異常な現象その答えを導き出す。
絶対に殺されてたまるか!!最後まで悪あがきしてやる。
私は扉を対象に<完全なる光彩の消失>発動する。
そいつは窓から入って来た。
丸腰の男。武器や鎧すら身に着けていない。
私はこんな奴に嵌められたのか……
だが私の能力は物質を黒くさせるだけではない。その本質は相手に対し遠近感を失わせることだ。
私に残された選択肢は扉に張り付き潜むだけ。
私の行動は正解だった。
そいつは哀れにも扉に張り付いた私がいなくなったと勘違いし、ひざを折った。
そしてその瞬間は訪れた。私を拘束する能力が解除されたその時。
勢いよく飛び出し、私はそいつに触れる!!
私は勝ちを確信する。
私の能力のもう一つの使い方。それは相手の網膜に対して発動すること。
それはつまり視力を奪うことを意味する。
盲目状態である男はすべてを悟ったのだろう。私に首を差し出して来た。
そのあまりの潔さに私は疑問に思う。なぜこいつはこんなにも潔く死を受け入れられる!?
私なら絶対に抗うのに!!
だから疑問に思った。
「お前の前世の最後はなんだった?」
「冤罪の死刑囚」
私の苦痛と比べたら余りにも易しい。簡単に死を受け入れられる程度には易しいのだ。
私は笑いが堪えられなかった。
そして剣を振り下ろす。
振り下ろした剣が肉を切り裂く手ごたえはあった。
しかしそいつが最後の悪あがきをしようとしている。それは感じ取った、だが遅かった。
そいつは私に触れたのだ。
私の目に映るものは暗闇だった。
なぜ私が盲目になっている!?その答えは瞼に触れてみると分かった。
くっついている。瞼が開かぬよう縫い付けられているかの様に。
やられた……
私の失態。存在を、位置を、知らせてしまった。
長い沈黙が訪れる。
私は考える。この状況をどうすれば打開できるのかを。
相手は丸腰、剣をむやみやたらに振れば当たるだろう。だがそいつを殺したとしてこの能力は解除されるのか?
その答えは“わからない”
もし解除されなかったとしたら、私の今までの苦労は何だったのか?
次の偉業を成す義務は絶対に達成出来ない……
ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ。心の中で金切り声を上げる
そうして哀れにも再び願う“助けてください”と。
「自らの首を絞めあうウロボロスよ」
あの時と同じ声が響き渡る。
「そなたらの呪いを解き放とう“解呪”」
私の目は再度見える様になった。
だが目の前の男、その表情が驚愕に染まっているのに気づく。
私は自身の体を見る。解けている自身に纏っていた漆黒が……
顔を見られた。ならばこの男を逃す訳には絶対にいかない。
そいつは窓から逃げ出す。
私は追い掛ける。




