12.背負う
私の名前はアフロディテ=グネーシン。
アシロのとある街で生まれた。
私達は大家族だった。父と母とその両親。そして四人兄弟。
ごく普通の家庭。それが私にとっての幸せだった。
私の運命が変わったのは7歳の時。
武装集団が私の街を襲撃した。
その街の住民の多くは人質にされる。もちろん、私も、私の家族も。
私達人質はいくつかの建物に集められ、武装集団は立てこもる。
私は武装集団の顔を見て時驚いた。同じアシロ人だったのだ。
彼らはこの国の格差や政治の在り方に不満を持った人々だったのだろう。
武装集団はいくつもの重火器を所有していた。そしてこの国の軍隊と衝突した。
激しい戦闘だったのだろう、幾人もの命が死に、多くの建物が倒壊した。
私達人質が集められた建物もまたその例外ではなかった。
生き埋めにされたのだ。
爆発により建物が崩落する瞬間、罪のない人々の悲痛な叫び声が聞こえた。
幸か不幸か私は瓦礫に埋もれながらも、かろうじてまだ生きていた。
全身が焼けるように痛かったのを覚えている。
その爆発により多くの武装集団は死に絶えたのだろう。
この国の兵士が生存者を助けるためにせわしなく歩き回っていた。
「助けて!!」
彼らに私の命がここにあると必死に叫んだ。
喉が焼けるように痛い。それでも私は叫ぶのを止めなかった。
私の前を何人もの兵士が素通りしていった。その度に私は絶望した。
私の命の炎がもう消えかけている。そう実感した時。
一人の兵士がふとこちらを向いた。彼は走って向かって来ると、急いで私を救出してくれたのだ。
彼の顔を忘れることはないだろう。私にとって、命の恩人であり、英雄であり、そして初恋の人。
そうして家族の中で私だけが生き残った。
後から聞いた話、私の喉は瓦礫に押し潰されていた。はなから叫び声なんて出ていなかったのだ。
治療により回復した私は助けてくれたその兵士に合った。
どうしても知りたかった。なぜ彼が私を見つけることが出来たのかを。
彼はその理由を直接的に説明するのを避けた。
それはただの偶然なのか、もしくは彼が単に耳が良かっただけなのかもしれない。
「俺は背負っているんだ。この国の人々の命を。だから自分の背中に背負える分は全部背負う」
彼はそう言った。それは私にではなく、彼が自分自身に語り掛けている様だと私は感じた。
私は彼が言いているその言葉の意味が理解出来なかった。
あの時死んでいてもおかしくなかった私の命。今生きているのはこの国に助けて貰ったから。
この国のためになる仕事をしよう。そう心に誓った。
だから私は諜報員になった。
私は優秀だった。そして国からのバックアップも十分にあった。
そうして祖国に敵対的な国の情報を盗んだ。それは、カリメア、ナイャチ、日本……
時として私は殺人も犯した。私が捕まることそれは祖国の情報を漏らしてしまうということ。
だから人を殺すことに何の抵抗もなかった。
私が多くの実績を残し存在が有名になりつつあった頃。捕まったのだ。
改革派の人間。それは私が誓った国の人間だった。
私が捕まったその先の運命。それは拷問。
多くの肉体への苦痛。それは私の心を折るに十分だった。
すべての情報を吐いた。それでも拷問が止むことはなかった。
拷問者はその行為を楽しんでいたのだろう。
「死よりも辛い苦痛を味わわせてやるよ」
それは私の絶望の始まりでしかなかった。
何本かの手や足の指が切断され、両の目が抉り出された時、あまりの激痛に私の理性は狂った。
だからなのか、いる筈のない存在に願った。“助けてください”と。
「生物に等しく訪れる死よりも更に“過酷な苦痛”を肉体に刻まれる者達よ」
美しく明瞭な声が響き渡った。
この世界に来て、まず私は喜んだ。
苦痛から解放されたこと、そして失った体の部位が再生していること。
失った体は取り戻すことが出来ない。それが前世の常識。
その常識が覆っているのだ。なにより目が見える、このことが喜ばしい。
そして私は目を閉じ深く瞑想する。そして瞼の奥に浮かび上がる文字を読み上げる。
・第一週:1日目
・Transcendent ability:<完全なる光彩の消失>
・称号:なし
<以降は初回のみ表示する>
1.あなたは1週間毎に偉業を成す義務がある。
2.この義務の期限はあなた以外の転移者全てがこの世界から消えるまでとする。
3.一週間に複数の偉業を達成したとしても、翌週の偉業を成す義務へ繰り越すことは出来ない。
4.偉業を成すことに成功した場合<称号>が与えられ、以降ここで確認することが出来る。
5.偉業の獲得方法として、他の転移者を殺せば無条件で<転移者殺し(Name)>が与えられる。
6.その他獲得方法として、有名になること、生物を殺すこと、発明すること、etcで与えられる。
上記の裁量として、百の運命に変化を与えたか、又はこの世界で未だ成されていない出来事を実現したかを基準とする。
私は理解する。転移この本質を。
「これは殺し合い」
前世でやっていたことと変わらない。私が有利であることも変わらない。
私には技術も知識もあるのだから。




