表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

10.訪れ


 第一週:4日目

 俺はいつも通り出店で朝食を買い。馬小屋へと行く。

 

 馬を借りた今俺の持つ硬貨は丁度0枚。

 後戻りは出来ない。自分を信じろ、覚悟を決めろ!!

 

 そうして俺はフルートの町へ向け馬で駆ける。



 俺はこの世界で出来得る最速で移動している。ただ俺の時間感覚はゆっくりとしたものだった。

 それは、恋い焦がれた人を待つ様な……死刑囚が刑の執行を待つ様な……


 その中で俺は考えを巡らせる。

 このままフルートの町に到着したとしてそれでいいのか?

 幾つか想定しなければならない。


 もし既に虐殺が始まっていたら。俺はその只中に居合わせることになる。

 相手の能力は?そして俺の能力は通用するのか?答えは分からない。

 しかし一つだけ断言出来ること。俺の能力そして武装はあまりにも無力だ。

 仮に『時間停止』だったとして相手との対面それは即ち、俺の即死を意味する。


 まだ町に異変が起きていない場合はどうだ?

 俺はいとも簡単に町の中に潜入することが出来るだろう。ただその転移者の立場に立って考えてみよう。

 俺がフルートの町を虐殺するとして、その町に潜入し一番気に掛けることは何だ?

 それは村人や兵士ではなく、逃げられる可能性の高い旅人だ。誰が入り、誰が出ていくのか、それは確認する筈。

 俺が町の中に入る。その行為は、見られる、監視される、ターゲットにされることを意味する。


 そして単純なこと。

 俺の持ち金はゼロなんだ。

 町に入ったとして、何かを買うことも、宿に身を隠すことも出来ない。

 何もしない旅人、それはさぞ特異に見られることだろう。


 俺は町に入ることは出来ない。町の外から中の状況がわかる場所そこに身を隠す必要がある。



 フルートの町から適度に離れた場所で馬を止め立ち止まる。

 俺は馬から降り、その顔を優しく撫でる。

「ここまで一緒に来てくれてありがとう。俺は必ず戻ってくる。

 君は賢い子だ。だから少しの間ここで待っていてくれ」


 俺はその場に馬を留まらせ、道から外れ森の中に入る。

 そのまま森をかき分けフルートの町に近づく。そして丁度いい背丈の大木に登る。


 遠目に町を見下ろせるいい場所だ。

 俺の目に映るのはフルートの町。その居住区。

 そこは発掘され持ち込まれた鉱石を製錬する場所も兼ねているのだろう。釜戸や煙突が多数建っており、それらはもくもくと煙を吐いている。

 そして居住区と作業区が離れていることを実感する。その二つを結ぶ道を夜中に歩くには危険だと感じさせる程度には。

 

 見渡す限りその町に異変はなかった。

 

 日が沈み暗闇が訪れるまでそこで待った俺は移動する。

 誰にも見つからない様に音を立てず、ゆっくりと町に近づく。 町には石と木材の防壁があり俺はそれをするする登り上がる。


 それから既に目星を付けていた、一般住民のものであろうレンガ造りの二階建ての住宅に近づく。

 建物の直立した壁面に対し<無限の摩擦力>発動。俺は両手両足に対し能力を交互に発動させることでどんな垂直な壁だろうと登ることが出来る。

 建物の屋根上。この場所は町全体を見通せるいい場所だ。



 第一週:5日目

 俺は今待っている。そしてそれがもう少しであることを実感している。

 寝静まったこの町の住人は気付かないだろう。微かな血の臭い、微かな物音。

 臨戦態勢になった俺はそれを敏感に察知している。

 俺は右腰の裏を触って確認する。服の内側に間違いなくある、柄に布を巻いたナイフが。


 

 この町の出口と入口の二か所には、夜番をしている兵士がそれぞれいる。

 彼らの傍には松明が設置してある。その二つだけがこの町の光源。


 始まりの訪れは明確な変化があった。

 作業区側の出入り口の光源が消える。そして微かな物音。

 続いてドラム側の出入り口の光源が消える。


 そうしてこの町は暗闇が支配した。

 俺はこれを想定して目を閉じ、目を暗闇に慣らしていた。



 静寂な町にバリンというガラスが割れる音が響き渡る。

 住人の何人かは目を覚ましたことだろう。そして不信に思う。


 時間をおいて再度、ガラスが割れる音がする。

 この時点で多くの住民は起きた筈だ。

 そして疑問が確信になる様に思う。この町に何か異常が起きていると。


 住宅から扉が開く音。そこから松明を持った住民が次々と出てくる。

 

 

 この時点で既に異常だが俺は更に異常な光景を目にする。

 その松明を持った住民がゆっくりと、一人ずつ倒れて逝く。彼らは悲鳴や断末魔の叫びを上げることすらなかった。

 ただ、ドサリと人の倒れる音と、カヒュという質の悪い笛が鳴る音だけがするのだ。

 

 住民は恐怖と同時に困惑しただろう、先ほどまで近くにいた仲間がいつの間にか倒れているのだから。

 生きている者は絶叫し逃げ出す。それら多くの人は転倒し這いつくばる。

 そしてまた一人ずつ……



 安全な場所にいる筈の俺でさえ恐怖した。

 何が起きているのか全く理解出来ない。なぜこんなにもあっさりと人は死んで行くのか。

 そして転移者の姿がどこにも見えない。


 本当にいるのか『時間停止』という存在が……

 だがなぜ一人ずつ死んでいく?それは能力に制限があるから!?

 いや憶測は止めよう。


 間違いなく言えること。俺がこのまま地面に降りれば気付かれ殺される。

 今の俺に出来ることは何もない。待つんだ全ての終わりを……



 外に出た住民が全員殺され、町に静寂が取り戻された頃。

 また扉が開く音がする。

 おそらくそいつは全ての家を捜索しているんだ。目撃者を一人として残さないため。

 更に言えば金品も漁っているのだろう盗賊の仕業と偽装するために。

 


 そして何者かは俺の今いる建物のその中に入って来た。

 俺が最も緊張する瞬間。気づかれた終わり。

 

 そのまま能力を使ってスルスルと壁を降りる。そして扉の前でドアノブに手を当てがい待つ。


 どれ程待ったか分からない。

 時間が経ち扉のその奥で、ドアノブの裏を人が触れたた感触がする。


 その時その瞬間、俺は<無限の摩擦力>発動する!!

 縫い付けた。この扉とその奥にいる人間を。


 待ってろ殺人鬼、今から俺がお前を殺しに行く!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ