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格パラ外伝 意志を継ぐ者達  作者: 福島崇史
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崇の提案

「グラップス代表の五十嵐君を呼んでくれるか?」

崇は確かにそう言った。

五十嵐さんではなく、五十嵐君と言ったのだ。

ここに大作は違和感を覚えていた。


五十嵐といえば、大作が独立する前に所属していた古巣であり、今や日本を代表する格闘技団体へと成長したグラップスの代表である。

その五十嵐を「君」付けで呼んだ、、、

確かに五十嵐は崇より5歳ほど年下である。

年下ではあるが、、、基本的に崇は、親しくなるまで年齢関係無く「さん」付けで人を呼ぶ。

その崇が「君」付けで呼んだという事は、、、

そんな事を考えながら大作は、マイクのスイッチをONへと切り換えた。


「ご来場の皆様、大変お待たせしております。只今の試合につきましては未だ審議中でございます。恐縮ではございますが、今暫くのご辛抱をお願い申し上げます。

続きまして、業務連絡をいたします。

グラップス代表、五十嵐 達也 様、至急本部席までお越し下さいませ」


それから2分後、1人の男が本部席へと現れた。

「どうも、五十嵐です。お呼びでしょうか?」


ピシッとスーツを着こなした清潔感溢れるその姿は、一見するとデキるビジネスマンの様であり、とても格闘技関係者とは思えない。

バランスのとれた肉体に整った顔立ち、、、

恐らくは女性にも不自由はしないタイプであろう。


「お呼びだてしてすんません、、、うちの福井 崇が何やら話したかったみたいで、、、」

大作が立ち上がり丁寧に出迎える。

かつての師であり、独立の際にも独立してからも色々と快く協力してくれた、、、

そんな男には流石の大作も礼を尽くすらしい。

ところが五十嵐を出迎える崇の態度は、そんな大作の逆を行く物だった。


「よっ!達っちゃん!久々やな!!」

椅子に凭れたままヒョイと片手を上げた崇。


「久し振りっスね。引退試合見せて貰いましたよ。やっぱ歳には勝てませんねぇ、病院行かんでええんスか?」

こなれた口調で五十嵐も答える。


「ぬかせっ!これくらいは屁でもあらへんっ!、、、と、言いたいところやけどな、明日一応診て貰うよ」


言葉のキャッチボールを目で追う様に、大作の顔が2人の間を往復する。そして、、、


「えっと、、、やっぱり2人はお知り合い?」

おずおずと尋ねる大作に


「せやで」

さも当然とばかりに答えた崇。

五十嵐もウンウンと頷いている。


「なんで言うてくれんかったんよっ!」


「ん?訊かれんかったから」

軽く拗ねて見せる大作に、それを上回る軽さで崇が答える。そしてその横では、又も五十嵐が頷いていた。


「どういった知り合いなん?」


「あぁ、、、達っちゃんが未だ駆け出しの頃、俺を訪ねて来たんや、コマンドサンボを教えて欲しい、、、ってな。全くもってセンスが無くてなぁ、覚えも悪い奴やったけど、今や有名団体の長やもんな、、、人生わからんもんや」


「ハハ、、、えらい酷い言われようっスね、勘弁して下さいよ。で、俺を呼んだ用件てのは?」

本題を切り出した五十嵐に、崇が表情を改めてこれまでの経緯を話した。


「、、、と、まぁそんな訳で俺の意見を求められたんやけどな、ここで実行委員やない俺が発言する以上、蛮君の所属するグラップスの長にも同席して貰わんとフェアや無いと思ってな」


「フフフ、アンタらしいっスね。で、福さんの意見てのは?」

問われた崇が実行委員へと視線を這わし、そして静かに口を開いた。


「会場を借りてられる残り時間もあまり無い、、、そこで俺の提案は、鳥やんの毒霧にはイエローカードを与えて、このまま延長ラウンドを行う。

延長ラウンドは3分1ラウンドのみで再延長は無し。先にポイントを奪った者を勝者とするサドンデスルール。それでも決着がつかない場合、判定は無しで引き分けとする。ただし、、、

引き分けた場合、次回のグラップスの興行で両者の再戦を行う、、、ってのはどうや?」



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