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格パラ外伝 意志を継ぐ者達  作者: 福島崇史
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プロレスとは、、、

その昔、プロレスラーは化物だった。

常人とはかけ離れた肉体と怪力を持ち、恐ろしい戦闘力を誇る怪物として畏敬の対象とされていた。

しかしある日を境に、ファンタジーの住人だった彼等は、突如として現実の世界へと引き摺り下ろされる。

その要因となったのが、総合格闘技の台頭とバーリ・トゥードの普及である。


格闘技の基本理念は極めてシンプルだ。

「誰が一番強いのか?」


バーリ・トゥードの登場により、それを決める場が出来てしまった以上、プロレスラーもそれを避けては通れない。

そして名だたるレスラーが数多く参戦する事になるのだが、結果を残せた者はほんの一握りであった。


トップレスラーと呼ばれた者達が次々と散っていく中、当然ながら世間の目は厳しい物となる。

「プロレスラーって実は大した事無いんじゃないか?」

そういった風潮が流れ、事実プロレスの興行は一時期苦しいものとなっていた。

逆に格闘技はブームとなり、チケットは飛ぶ様に売れ、TVの視聴率もうなぎ登り。プロレスファンの多くもそちらへと流れた、、、


蛮はそれが悔しく、そして悲しかった。

ならば自分がプロレスを再び昔の地位まで引き上げるっ!!

そんな想いを抱いていた矢先の事故、、、

絶望感に圧し潰されそうな時期もあったが、腐らず諦めなかったお陰で、今回のチャンスが巡って来たのだ。

蛮にとって総合格闘技はプロレスの仇にも等しい。

だからこそ、その土俵でプロレスの凄さを見せつける事の意味は大きいと思っている。


試合直前となっても黙々とスクワットを続けていた蛮。

ウォームアップによりパンプアップされた身体は、一回り大きくなった様にも見える。

臨戦態勢は充分に整った。

蛮は動く左手で自分の両頬をピシャリと叩き

「ウッシャ!!」

と気合いを入れると、入場口の方へと太いその足で歩みを進めた。



崇が本部席へと戻ると、それまで忙しく動き回り、殆ど席に居る事が出来なかった優子も戻っていた。


「お疲れさんやなぁ、、、」

崇が労いの言葉を掛ける。


「ほんまに疲れたわ、、、誰かさんが全っ然動いてくれへんからっ!!」

優子が念のこもった視線を大作へとぶつける。

しかし当の大作はそれから逃げる様にして、視線を前方宙空へと泳がせた。

だが、優子も優子で易々とは逃がさない!

大作の顎先を掴み自分の方へと向かせると


「ヒモと一緒に居る女の人って、毎日こんな気分なんやろうねっ!」

と、強烈な皮肉を浴びせかけた。


主人に鼻先を掴まれ叱られる犬の様な佇まいの大作、、、上目遣いで一言

「ほんまにいつも感謝してます」


「当然っ!!してなかったらブン殴ってるわっ!!」

そう言うと優子は、顎先を投げ捨てる様にして大作を解放した。


そんなやり取りを微笑ましい想いで見ていた崇は、早く一緒になればええのに、、、と思っていたが、なんとなく口に出すのはやめておいた。

すると突然、優子の視線が崇の方へと向けられた。


(え、、、俺もなんか怒られるんやろか、、、)

そう思った崇は意味も無く身構えたがそうでは無く、穏やかさを取り戻した優子はこんな質問を口にした。


「それはそうと次のメインイベント、鳥やんの相手って元プロレスラーなんでしょ?

そもそもプロレスって格闘技なん?」


思わず崇と大作が顔を見合わせる。

そして大作は

「解説者の福さん、見解の程を宜しくお願いします」

そう言って説明役を崇に委ねた。


「まぁその質問は、度々論争の火種になるねんけど、人の受け取り方次第やから明確な答えは出てないねん。ただ俺個人の考えで言うならば、答えはYESや。

素手で人体を破壊する技術がある物は全て格闘技やと思う。ただ、、、少しややこしいのは、プロレスは格闘技やけど、プロレスの試合は格闘技の試合や無い、、、ってのが俺の持論や」


それを聞いた優子がキョトンとした顔でボソリと溢す。

「えっと、、ちょっと何言ってんのか解んないっス」


「アハハハッ!優ちゃんアホ丸出しの顔なっとるで♪」

そう笑う大作を、再び優子の尖った視線が刺す。そして大作はすかさず目をそらすと、又もや犬の様になっていた。

そんなやり取りが収まったのを見届け、崇の解説が再開される。


「解りやすく言うと、格闘技の試合には大前提ってのが2つあるんやけど、プロレスの試合はそれらを2つ共、完全に無視しとるんよ。

だからプロレスの試合を格闘技の試合とは呼べへんと思う、、、」


「2つの大前提って?」


「1つは強い者がチャンピオンになる事。

でもプロレスはエンターテイメントである以上、派手で人気のある選手が上に行く。

そりゃそうよな?本当に強い奴は寝技が上手い選手って事になるはずやけど、そんなん地味過ぎて人気が出る訳あらへん、、、だからプロレスはチャンピオンが必ずしも一番強い訳や無い。これが1つ目の大前提との矛盾点や」


「ほぅほぅ、で、2つ目の大前提は?」


「それは相手の技を喰らわずして相手を倒す事。しかしプロレスは全く逆で、相手の技を受け切った上で勝つ事を美徳としとる。

子供でも避けれる様な技でもあえて受ける。

ロープに振られても基本的には戻る。

それを何故かと訊かれても、それがプロレスだからとしか答えられんけどな、、、

まぁ様式美みたいなもんやと思ってる。

これが2つ目の大前提との矛盾やな」


「ふ~ん、なるほどねぇ、、、そう言われたら確かに合点がいくわ。丁寧な説明ありがとね解説者さん♪」


優子が納得してくれて胸を撫で下ろした崇。

しかしその隣には、優子の機嫌が直った事で崇以上に胸を撫で下ろす大作が居た。

そして丁度そのタイミングで、試合終了を告げるゴングが鳴り響く。

いよいよ真打ち登場である。

鳥居vsビッグ・蛮の試合がついに始まる!!

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