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格パラ外伝 意志を継ぐ者達  作者: 福島崇史
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SLAP(スラップ)

破裂音が響いたリング上、顔をしかめ身を捩っているのは山岡の方だった。

それは効いたというより、純粋に痛みを感じている様子である。


「へぇ、、、」

崇が感嘆の声を静かに漏らした。


「福さん、、、今のって、、、俺、マンガで見た事あるんやけど、まさか、、、な?」

予想外の光景。

そしてその光景をもたらした予想外の技。

驚きからか大作の言葉が途切れ途切れとなっている。


「ああ、、、それやったら、そのまさかやと思うで。前にこんな事があってな、、、」

そう前置きした崇が、過去の練習中にあった出来事を話し始めた。


その日藤井は、鳥居相手にスパーリングを行っていた。

執拗に放たれる鳥居の左ミドル。

総合のスパーならば蹴り足を取って倒したり、タックルを狙う事も出来るが、これは打撃限定のスパーである。

かわす、、、

捌く、、、

受ける、、、

己も前に出る、、、

その選択肢は総合よりも限られる。


その中でも一番してはいけない選択は、受ける、、、つまりはブロックする事である。

ガードと言えば聞こえは良いが、結局は腕に蹴りを喰らっているのと同じであり、そのダメージは確実に蓄積されてゆく。

そしてこの時の藤井は、その一番してはいけない選択をしてしまっていた。


時間と共に上がらなくなっていく両腕、、、

それでも歯を噛みながらその腕でガードをする、、、

しかしそれはダメージを上乗せする行為であり、悪循環でしかない。

そしてとうとう、藤井のダメージを見計らった鳥居が勝負に出た。

とどめを刺す為、ラッシュを狙って間合いを詰める。

しかしその瞬間、同じように前へと出た藤井。

そして直後、リングに尻をついていたのは鳥居の方であった。


呆気に取られた鳥居が、痛みも忘れて藤井に問う。

「今の、、、何?」


「えっとね、、、マンガで見た技やねんけど、、、確か、鞭打(べんだ)って名前だったと思う。見よう見まねでやったけど、上手く決まったね、、、ハハ、、、」

自分でも驚いたのか、藤井の言葉には戸惑いが見え隠れしていた。


鞭打(べんだ)、、、某格闘技マンガで有名となった技術。

そのマンガ内では

己の腕を液体の様にイメージし脱力した状態の平手を叩きつける事で、鞭の様にしなった打撃となり、鍛える事の出来ない皮膚そのものにダメージを与える、、、と描写されている。


そのマンガの内容そのままという訳では無いだろうが、事実、鳥居はダウンを喫した。

それも、効いたというのとは違い、単純に痛かったと後述している。

たかが平手打ちと馬鹿にする者も居るだろうが「ビンタ」というのは意外に痛い。

実際、プロレスラーに

「一番痛い、喰らいたくない嫌な技は?」

と問うと、多くのレスラーが「ビンタ」と答えている。


そして今、その時と同じくリング上で山岡を相手にも藤井流鞭打を使用したのだった。

響き渡った水気を帯びた破裂音は平手打ちならではの打撃音。

更には鳥居とのスパーの時同様、両腕に力が入らない状況だからこその脱力。

無駄な力が抜け、スピードの乗った「ビンタ」が山岡の左頬に炸裂したのである。


「かぁ~~、、、しかしマンガの技を使うかね普通、、、?」

驚きを通り越し、呆れ口調の大作。


「でもな、あながちマンガの中だけの技って訳でもあらへんで。

日本では無名やけど、海外にはスラップ・ファイティング・マーシャルアーツって格闘技があってな。その技術体系は名の通り殆んどが平手打ちで構成されとる。

それに今ではかなり形が変わってしもたけど、日本の骨法も昔は平手で闘ってたんやで。

ほら!プロレスラーの獣神サンダーライガーも掌打って使ってるやろ?

あれ元々は骨法の技やねん」


またもや解説者と化した崇を見やった大作。

今度何かウンチクをたれ始めたら

「知っているのか?雷電っ!?」

と必ず言おう、、、心の中でそう誓っていた。

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