一皮剥けちゃいました
「え~、、、レフリーの三島です。
現在の状況と、協議の結果についてご説明申し上げます。先程の島上選手が取った行動に対し私は、フェアでは無いと判断して警告を与えました。しかし対戦者である花山選手から
(構わないから、この試合に限りそれを認めろ)という旨の申し出があり、協議いたしましたがその結果、、、やはりあの行為を認める訳にはいかないとの結論に達し、今回は警告のみで減点は無し。次回からは減点対象となる事を皆様にご報告させて頂きます」
歯切れ良い口調で堂々とそう述べると、深々と頭を下げて後方へと下がる三島。
しかし、その様子を愕然と見つめる者が2人、、、そう、当事者の島上と花山である。
この2人はてっきり花山の意見が通る物と思い込んでいた。
だからこそ先の三島の視線に対し、花山は笑顔で、島上は戸惑いを以て応えたのだ。
しかし今、三島の下した裁定は、、、
両者がキョトンとなるのも無理は無い。
しかしあの時、協議を締め括る際の三島の視線、その本当の意味を2人は勘違いしていたのだ。その内容を前話の原文を用いて振り返ろう
。
三島が確認の意味を込めて視線を送る。
(お前らの言い分は理解した、、、でも決断は俺に委せて貰う、、、ええな?)
笑顔で力強く頷いた花山。
(どうやら私の言い分が解って貰えたみたいやな♪ま、当然やけど)
戸惑いと躊躇いを見せながら、力無く頷いた島上。
(チッ…花山に施し受ける形なんは癪やけど、元々は私が蒔いた種やし、、、しゃあないか)
それを見て意を決した三島も数回小さく頷くと
(良かった!納得してくれたみたいやな。ここはレフリーとして威厳を示さんと、、、な)
マイクを手に取り、リング中央へとその身を晒した(←今ここ)
と、いうのが実の流れである。
すれ違い甚だしい。
やはり言葉の無い確認作業には危険を伴う、、、
だが、実のところマイクを手にした時点では、三島はまだ迷っていた。しかし
(この試合だけ、、、)
それを認めてしまってはキリが無くなる。
設定されたルールに基づき行われるのがスポーツの在るべき姿、、、
それをその都度、選手の言い分に合わせて変えていては、何の為のルールか?
それこそ本末転倒となってしまう。
ようやくその答えが出たのは、リング中央で口を開く寸前の事だった。
あえて手を差し伸べず、放置したままでその裁定を見届けた崇と大作だが、両者とも満足そうにリング上の三島を見つめている。
そして言葉には出さずとも、その表情はこう語っていた。
(そうだ、それでいい)




