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格パラ外伝 意志を継ぐ者達  作者: 福島崇史
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離れた電極と異様な光景

固く結ばれた2人の手は、直列された電池が電流を通すように、両者の想いを互いへと流した。

何かを感じ取ったのだろう、観客もその光景を拍手で迎えている。


しかし意が通じたとは言え、まだ試合中である。

その残酷な現実が、せっかく繋がった想いの電流を断ち切った。

結ばれていた電極を離した両者が、少し距離を取り構え直す。


とはいえ、打撃の認められないルールである。両者の構えにもガードという概念は無く、腰を引き懐を深くして、伸ばした手で宙を掻きながら相手の様子を窺っている。

しかし工藤は既に1ポイントをロストした身である。

初期の持ちポイントが3しか無い中での1ポイントロストは重い。

相手の出方を窺っている場合では無かった。

すべき事は出方では無く、攻め入る為の機を窺う事である。


だが、、、浦上の長く学んだ格闘技である修斗(しゅうと)は、初代タイガーマスクであった佐山(さやま) (さとる)氏が心血を注いで創始した格闘技。

いわば日本における総合格闘技の老舗であり、その技術は完成されている。

事実、世界のトップファイターの中にも修斗出身は多く、その完成度が伺い知れる。


それでも付け入る隙は無いものかと、色々試みる工藤。

上半身、、、首に組み付こうと何度も手を伸ばすが、パリーで払われて叶わない。


下半身(腰部)、、、タックルに行く素振りを見せても、懐が深い上に反応も早い。強引に行こうかとも考えたが、潰されるイメージしか湧いては来なかった。


(くそぉ、、、隙が無ぇ、、、)

焦りが汗となり頬を伝った。

その時、不意に浦上の腕が首筋へと伸びてきた。

一瞬反応の遅れた工藤、パリーで払う事が出来ず、咄嗟に距離を離そうとしてしまった。

リングに両腕をつき、身体を浮かせた瞬間、自分でも解っていた。

自らが大きな隙を作ってしまった事を、、、

そして浦上に大きなチャンスを与えてしまった事を、、、


(やってもたぁっ!)

そう思った時には遅かった。

すかさず前に体重を掛けた浦上が、ミサイルよろしく頭から突っ込んで来た。

そしてそのまま工藤の腹に顔を埋め、腰に手を回している。

そうである。試合開始直後に工藤が仕掛けた事を、そっくりそのままやり返されたのだ。


そして今、まんまとタックルを許し、浦上は己の身体に組み付いている、、、自分は失敗した攻め手を用いて。

悔しかった。しかし今はこの状況を脱するのが先決である。

後方へ体重を掛けてはこのまま押し倒されてしまう。そうなっては先程の恐怖の再来を味わう。


工藤は必死に腰を引き、浦上に上からがぶり掛かった。

そしてその直後、工藤が見せた光景は圧巻そのものだった。

上から浦上の身体に両腕を回すと、なんとそのままリングからぶっこ抜き、頭上高く持ち上げたのである。


多数の障害者スポーツで実績を残している工藤、その中でも車イスマラソンの経験は長く、腕の筋肉の発達は目を見張る。

そんな彼の上半身のパワーはグングニルにおいて、一般部員、障害部員関係無く、群を抜いている。

とはいえ、浦上とて決して軽量では無い。

それを足の踏ん張りが効かぬ者が、純粋な上半身の筋力だけで高々と持ち上げる、、、

これはやはり異様な光景と言えた。


会場が大きくどよめく中

「んん、、舐めんなぁっ!」

叫んだ工藤が、持ち上げた浦上を頭からリングへ叩き付ける!

激しい揺れを見せたリングに、首を捻じ曲げた浦上が突き刺さった!

工藤の用いたその技、、、

それはプロレスにおいて「パワーボム」そう呼ばれる物だった。

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