Ж幸福で孤独な世界・共通①
科学者フレミアンドが開発した人類管理システムと地球とよく似た惑星テラネスからもたらされた人間製造マシン:ライラ。
それらにより人間は安全に生まれ、いつしか世界は幸せに満ちた。
時が経つにつれロボットの技術が発展し、人の暮らしはさらに楽になる。
人間が機械を作る機械を作ったのを最後に、ロボットはロボットを作るようになった。
そうして家事や教育までもを機械がやるようになり人間は職をなくした。
けれど人は機械が普及するにつれ、向上心や思いやり等、人としての心がなくなっていったのである。
いつから人は道を誤ったのか。
古びた機械はメモリーを呼び起こし、かつての人間達を憐れんだ。
この退廃したディストピアは偽りの楽園ミーゲンヴェルドの一部に存在する。
この世界で人間は老いたら、シベリヤ星へ送られる。
また新しい人間が簡単に生まれる。
規定より増えたら男はシベリヤ星へ送られる。
マシンに入れるのは女だけでこと足りるからだ。
◆◆◆
「お前は小麦を2つ購入したが、免許は?」
「ほら、ちゃんとあるだろ」
「これは一枚につき一つの免許だろう」
「なんだよ!こっちは免許の他にも金をはらったぞ!どうせ同じ物なんだから紙切れ一枚も二枚も変わんねえだろ!!」
「署で投獄しろ」
「はっ!」
進んだ未来、国の官吏や資産家が次々破産していき、かつて百ほどいた富、恵まれた立場の人間は十数世帯にまで現象した。
「国の支配者が代替わりしちまってからこの国はえかしくなった」
「物を買うにも免許、免許を取るにも金、仕事をするにも免許、どうしろってんだ!!」
「オイ早まるな!」
「止めんな!おれは死ぬんだ!!あんな紙切れに左右される人生なんて…いらねぇよ!」
◆祖に選ばれた少女は減らされる人々を越え生き残る
ここは未来、人間は試験管で簡単に作られるようになった世界。
機械人間が支配する国で世界は必要な人間と、不要な人間で分かたれた。
必要な人間は存在を許され、不要な人間は神に消される。
そんな世界に、記憶のない少女は存在していた。
生まれたときから記憶がないのか、無くしたのかも少女にはわからなかった。
「あの…あなたたちは…」
少女の前に、異質な二人の男が現れた。
「なぜ人間が我等の姿を視ている…?」
「姿が見えたらおかしいんですか?」
「この人間、なぜ我々の言葉を理解する?」
「もしや…」
「あの?」
「人間よ、我等は神だ」
「神様…!?」
(神は人間を作り、増えたら間引きをする為にいる存在…。
必要のない人間は消される。
私は記憶がなくて何もせずただ存在するだけの必要のない人間。
じゃあ私も消されるの――――)
少女はその場に膝をついた。
「二人とも、彼女を消してはいけないよ」
「了解した」
「この少女は何だ」
「彼女は選ばれた人間…我々が密かに造り上げた最高傑作‘アソシエ’だよ」
「あなたがたニンゲンは殖えすぎました」
天空より降り立つ女神は瞼を閉じ、人々に告げる。
“地球に必要のない人間を減らす”
無慈悲ともとれるそれは、受け入れがたい、しかし避けることもかなわぬこと。
相手は人を作りし、神という存在。
なれば、抵抗など羽虫の飛び回る微弱な雑音。
「…地球に必要のある人間になればいいのよ」
一人の少女は、女神に仇なすことでは生き残ることなど不可能であると悟りて、稀有なる無二を己に賭けた。