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恋心  作者: 水城朱音
9/14

第9話:突然の告白

9時近い時間と言う事もあり、社員は皆帰ってしまっていたのか社外へ出るまでに誰とも会うことは無かった。

これで誰かに会ってたりしたら、明日は噂の的になるに違いない。

ホッとしながら歩いていると、課長が突然立ち止まった。

「車だから、少しここで待っててくれるかな?」

「は、はい。わかりました」


課長は急いで駐車場へ向い、一人になって少し考えた。


なんだか、これってデートみたいじゃないか?

いや、上司と部下として食事に行くんだからデートではないし…。


うーんっと首を捻って考えていると目の前に1台の車が止まり、課長が降りてきた。


「待たせたね。じゃあ、行こうか。乗って」

「あっ、はい」


初めて課長の車に乗せてもらったが、結構乗り心地がいい。


「川原さんは何か食べたいのとかあるかな?」

「うーん、これといってないんですけど、出来れば和食とかがいいですね」

「和食?」

「はい。この時間に洋食とかだとこってりな物になってしまいそうだし。だめでしたか?」

「いや。じゃあ、俺が知ってる店でもいいかな?」

「おまかせします」


課長は歳も近いし、上司と言っても比較的しゃべりやすい。

普段しゃべらないような事を言い合いながら車に乗っていると、なんだか知っている店の駐車場に入っていく。ここは、よく優子とも来ている和食の美味しいお店。



「ここですか?」

ちょっと驚いて、課長のほうを見る。


「そう。なに?ここ知ってるの?」

「知ってるっていうか、よく高島さんとも食べに来るんです」

「そっか、君達仲良いもんな」

「はい」


お店に入って店員さんに案内されたのはなぜか個室の座敷。

まぁ、男女2人きりで来店したら勘違いされてしまうのも仕方ないが…




「俺は車だから飲めないけど、川原さんは何か飲む?」

「いえ。病み上がりなので今日は烏龍茶にしておきます」

「そうだね。そうした方が良い」

「課長、何食べますか?」

「うーん、煮物は絶対食べたいな」

「あっ!ここの煮物は美味しいですよね!」



そうして1時間ほど経った頃だろうか。

それまで当たり障りの無い会話をして、2人っきりにしては会話が弾んでいたのに、突然課長は黙り込んでしまった。


「あ…あの、課長?どうしました?」

「……」


一応話しかけてみたものの、何だか重い空気を発して黙っている。

どうしたものか?と考えていると課長が口を開いた。


「…川原さん、突然だけど改まって話がしたい」

「話…ですか…?」

「あぁ。川原さんは今付き合っている人とかって…」

「い、いいえ。いませんけど…」

「そうか…」

「…?」


何だか良く分からないけど話が全く見えない。

すると今まで俯かせていた顔を上げると、真剣な顔をした課長と目が合って、ドキっとしてしまった。


「あ、あの…」

「実は、俺…ずっと前から河原さんが気になってて…」


気になってて?ま、まさかこれって!?


「好きなんだ…付き合ってくれないか?」



そういう課長の目は真剣そのもので。これが嘘偽りじゃないって事はその表情から言ってもわかる。

しかし、私は祐樹が好きだ。

そんな気持ちを抱えたまま、この人の期待に添うことはできない…

どうしたらいいのかと、戸惑いが顔に出ていたのか課長が困ったような顔をしてこちらを見つめている。


ど、どうしよう……早く返事しなきゃ……


「あ、あの……課長のお気持ちは大変うれしいです…」

「じゃあ…」

「でも!私、他にす、好きな人がいるんです!」

「……」

「だから…そのー、課長の気持ちには…答えられません。ごめんなさい…」

「そっかぁ…ダメか…」

「……すいません…」


これまでの人生で何回か告白された事はあったけど、何度こういう場面を経験しても慣れない。

まぁ慣れるなんて事はないと思うけど…。


「でも…」


?でも?

まだなにかあるのかしら?


「好きな人が居るってだけで、その人とは付き合っていないわけだから、チャンスはまだあるってことだよな?」

「へ!?」

「川原さんには悪いけど諦めきれない。俺の気持ちはもう知ってるわけだし…いつか振り向かせてみせるから」







そう言ってにっこり笑った課長は何だか悪魔のようだった。




なんだか、誤解を招きそうな行動にでた藤崎ですが、彼は決してストーカーではありませんのでっ^^;


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