第2話:私って頑固者?
ご飯を食べ終えた私は、洗面所に行き簡単な化粧をする。一旦部屋へ戻ってコートを羽織り、マフラーを首に巻きつけ、鞄を持って玄関へ向った。
「じゃぁ、行って来るねー」
「おう」
大声を張り上げてリビングに向ってそう言うと、外へ出た。
真冬になった今では寒さが身にしみる。
マフラーを口元に寄せて駅まで歩いて向う。
10分ほどすると駅が見えてくる。
ここは都心から離れた土地で比較的駅前も閑散としていて小さな商店街があるだけ。
そこから電車を乗り継ぎ1時間ほどで会社に近い駅に到着する。
だから朝は7時過ぎには家を出ないと、始業時間には間に合わない。
朝が弱い私には6時半起床がギリギリ。
だから毎朝起こしてくれて、朝ごはんまで作ってくれる祐樹には感謝してもしきれない。
そんな彼は家から20分ほどの所にある大学に通っている。
きっと背も高く、モデルか!?っと言うほど綺麗な顔立ちをしているから大学ではそれはそれはモテるんだろう。
しょっちゅう可愛い女の子が尋ねて来て、彼女か浮気相手かと誤解される。
そんな時はホントに参ってしまう。
私が彼を好きでなければこんな事態、笑ってすませられる。
でも彼の事を好きな私は毎回のように傷ついている。
心を痛めながら、それでも意地っ張りな私は何でもない様に振舞ってしまう。
ホント馬鹿だなって思う。
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会社に着くとまず最初にするのが上司へのお茶出しとメールチェック。
この会社には事務として入社した。私の主な仕事は、資料などの文章作成、コピー取り、営業の人が持ち帰った請求書などの会計など結構忙しい。
「おはよう」
パソコンを開いてメールを確認していると声を掛けられた。
相手は同期の高島優子。
優子とはこの部署に一緒に配属になってからの友達だ。
同期と言っても短大卒の彼女は私より2つ年下。だからと言ってお互い気を使う事も無く、いまでは歳も関係なく気の合う友達になった。
「あぁ、優子か。おはよう」
「優子かって失礼ねー。ところでさ、今日は昼休み一緒に外で食べない?」
「外で?」
「そう。近くにいい店みつけたんだー。いいでしょ?」
「うーん」
今日は仕事が立て込んでるし、ホントは食堂の方がありがたいんだけどな…
どうしようかと迷っていると、始業のタイムが鳴ってしまい、優子は返事も待たずに「じゃ、また後でね」と言って自分の席へと行ってしまった。
仕方なく小さなため息をついて、それからは昨日残してしまった仕事を片付けにかかった。
自分の仕事に没頭しているといつの間にかお昼休みになっていたのか、優子が話しかけてきた。
「亜子ちゃん、もうお昼だよ。早くご飯食べに行こう!」
「えっ!?もうそんな時間?じゃあ、行こうか」
そう言って私はコートと財布を手に取ると、優子の後についていく。
その日優子が連れて行ってくれたのは、会社から5分程のところにあるパスタのお店だった。
店内はそれほど広くは無いし、昼時にも関わらず数人しか席に座っていなかった。
「最近見つけたんだけど、ここのパスタなかなか美味しいんだよ」
まぁ、待たされることも無く席に座ることが出来たのはちょっとうれしい。
メニューを開くと結構種類があってどれもおいしそうだ。
食べるものも決まり店員さんを呼んで注文する。
出来上がりを待つ間、優子が祐樹の話題を出してきた。
「ねぇ、亜子ちゃん祐樹君とはどうなの?」
「どうって?」
「だから、なんか進展は無いのって聞いてるのっ!」
「進展たって…」
「だって、亜子ちゃんは祐樹君のこと好きなんでしょ?」
「そうだけど!仮にも姉弟だし…。好きだなんて、そんなの口に出せるわけ無いわよ…」
「えー、姉弟って言っても血は繋がってないんだから、気持ち伝えるぐらいいじゃない?」
「そんなことしたら一緒に住めなくなる!」
「でも、ずっとこのままって言うのも…」
「もういいの。この気持ちはずっと私の胸の中にしまっておくんだから」
「はぁ…亜子ちゃんって見かけによらず結構頑固者なのね…」
「はいはい。どうせ私は頑固者ですよ」
そこへ店員さんがパスタを持って現れた。
目の前にパスタが置かれると、優子は目を輝かせて見ている。
どうやら話はもういいらしい。
「わぁ、おいしそう。いっただきまーす!」
早速一口食べた優子はとっても美味しそうにしている。それを見た私は自分のパスタを口に運ぶ。
「うん。おいしいわね」
「だねー!また今度来ようね!」
「そうね」
そうしてお互いパスタを食べきると、お昼休みが後10分と言う事もあり、さっさと席を立つと会計を済まし会社に戻ることにした。




