最終話:繋がった心
「ゆ、祐樹…」
その言葉は私が言ったのか、彼女愛莉が言ったのか。
目の前には祐樹の彼女、そしてその後ろには祐樹。
とんでもない状況に陥ってしまったのではないかと私は頭の隅で思った。
「愛莉、お前こんな所まで押しかけてきて、何してる?」
祐樹の声はこれでもかと言うほど怒っているように聞こえる。
「何って…私は祐樹とは別れないって言ったじゃない!」
「しつこい女だな…」
「……っ!」
「オレのこと困らせてそんなにおもしろい?」
「でも!納得できない!」
「じゃあ、これなら納得できるのか?」
そう言って祐樹は私に近づくと突然腰を掴み引き寄せると唇を重ねた。
――――!?
いきなりの祐樹の行動に私は目も開けたまま。
見えるのはアップになった祐樹の顔。そして今唇に感じるのは祐樹のそれ。
背中には祐樹の手が回っている。
心臓はこれでもかと言うほど高鳴って気を抜けば意識を失いそうだ。
そんな私を他所に祐樹はもったいぶるかのように唇を離すと何かを言った。
そして去っていく足音。
しかし、頭が働いていない私はそんなことも気がつかないまま、呆然と突っ立っていた。しかも顔は火を噴きそうなぐらい熱い。
な、なにが起きた!?
ハッと気がついて彼女の方へ目線をやればすでに誰もいない。
そして祐樹のほうへ目線を戻せば真剣な目をして私を見つめていた。
「ゆ、祐樹…今…何を…」
「亜子にキスしたな」
「ど、どうして…」
「どうして?…それを俺に聞くの?」
「……」
「そろそろ姉弟やるのも限界だな」
「え?」
今なんと言った?
姉弟やるのも限界――――
「好きだ……」
そう言って抱きしめてきた祐樹は「ずっと亜子が好きだった」と。
その言葉を聞いた瞬間目に涙が浮かび頬にいくつもの筋をつくる。
ずっと言いたかった言葉。聞きたかった言葉。
これは夢?現実?
そう思わずにいられない。しかし、祐樹のぬくもりが現実だと言う事を証明している。
祐樹は私を離すと目線を同じにして私の顔を覗きこんできた。
その顔はこれ以上ないほど優しい顔だった。
「亜子は…俺の事好き?」
もう何も言葉が出なくてただ、ただ首を縦に振る。
すると祐樹はふっと微笑み、「そっか…」と言って頬を流れる涙を親指で拭った。
「…俺達遠回りしてただけだったみたいだな…言ってみれば簡単な事ことなのに」
「そうね」
「あーあ、もっと早く言えばよかった。そしたら3年も棒に振る事もなかった」
「全くその通りね」
「……」
「……」
「家…帰ろっか…」
「そうね」
満面の笑顔で答える私の手をとり、祐樹と私はたった5mの距離を手をつないで家へと帰った。
完
これにてこのお話は完結です。
初めて書き上げる事ができたお話をここまで読んでくださった皆様どうもありがとうごさいました。
感想などございましたら、遠慮せずにお願いします。
では。水城朱音




