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帝の粘り強い、業にも似た求愛により、帝と丙は和歌のやり取りをする間柄にまでなった。
そんな関係が三年も続いた。
ここで注目すべきは帝の気の長さである。
三年は長い。美人だって下手したらブスになるおそれがある。
帝は根気強く和歌を送ったり返事を返されたりしながら365×3を過ごした。
そんなこんなしていた8月のある日、丙が甲と乙に驚愕のカミングアウトをする。
「自分はこの国の人ではなく月の都の人なので。そろそろ月に帰らなきゃいけないみたいなんで。月からハンパなく強い人たちが迎えに来るので。そこんとこ夜露死苦」
現時点、NASAから月に生命体の存在、もしくは生命があったであろう痕跡の発表はなされていない。
なので丙の月の都発言は虚言であると考えるのが妥当である。
しかし当時の人たちは丙の言葉を信じた。
帝は「オマエを・・・誰にも渡さない!」的な感じで兵隊を2千人ばかり配備して丙を警護した。半分ストーカーのくせに余計なお世話である。
甲も「そんな奴ら俺がボッコボコにしてやんよ!」みたいな気持ちで猛ったが年寄りの冷や水であることは明白だ。余計な心配が増えるのでじっとしていてくれた方が家族もありがたいはずである。
そして、丙が指定した日の真夜中に、家の周りが昼間のように光に照らし出されたかと思うと大空から天の人々が雲に乗って降りて来てた。
現代でたとえるなら暴走族が大勢やってきて家をライトアップしながら「今から湘南走ろうぜ!」の状態である。