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ここは恋文専門郵便局 ーあなたの恋、届けます。ー  作者: 藤原ゆう
2.秘密の恋、届けます。
18/42

13.後日談

「で、過保護なあなたは、うっかり現場まで赴いた上に、その絶大なる力を振るったと。そういうことですか?」


「うるさいぞ。ハーネスト。過ぎたことをいつまでもネチネチと」


金髪の美貌の青年はくすっと笑うと、「そんなに大事かあ。あの子のこと」と、さらに火に油を注ぐようなことを呟いている。


「ハーネスト」


「だって、今までの子たちがいくら窮地に陥っても、あなたは力を使わなかった。そうでしょ?」


「それは……あいつがあまりに頼りないから」


「それだけ?」


「他に何がある」


「ゼノやカールがあの子の傍にいて、いら〜とすることない?」


「あるか。そんなもん」


不機嫌に言い放った主さま。


ハーネストと呼ばれた美貌の青年は楽しそうに笑っている。


「主さま」


扉の向こうでコトハの声。


「ああ。入れ」


ノブが回った。その時、ハーネストの姿が欠き消えた。


コトハが居間に入った時には、主さましかおらず。


お叱り覚悟で、コトハビクビクしながら椅子に座った。


しばらくの沈黙。


この間が怖い。


「まあ、いろいろ言いたいことはあるが。結果良い方向に進んだということで、今回は許してやる」


「え?」


「なんだ?」


「い、いえ……。ありがとうございます」


「ああ。お前の仕事は配達だ。それを逸脱するのは、これで最初で最後だぞ」


釘を刺すように言う主さまに、コトハは首が取れそうなくらいに頷いた。


「それから、これを」


「仕事ですか?」


主さまは二通の恋文を取り出した。


「いや。いずれも、お前宛だ」


「え。ええ!?」


手に取って見れば、一通はゼノ王太子から。そして、もう一通はカールからだった。


「お前は仕事の合間に何をしているんだ?」


二通の恋文を出したあたりから、明らかに主さまが不機嫌になっている。


「何もしてませんよ〜」


「恋文をもらってしまうような、何があった?」


「何もないです〜」


やっぱり主さまに怒られるんだ。


コトハは二通の恋文を恨めしげに眺めるのだった。





何とか主さまから解放され、庭に出て恋文を読むことにした。


(何が書いてあるんだろう)


心なしかドキドキしながら封を開ける。


王太子の恋文の内容も、カールのそれも。


どちらも似たようなものだった。


王女が旅立って以降の事後処理もが無事に終わったことと、身体がを労わるようにということと。


「なんだ。恋文じゃないじゃん」


半ばがっかりしながら、ホッとしている自分もいた。


(そりゃ、そうだよね。二人がわたしに恋文なんて。主さまが言うから本気にしちゃったけど。あの二人がわたしに恋文なんて、ありえないよ……)


ゴロンと芝生の上に横たわる。


今日も空は青く、爽やかだ。


あのあと悲鳴をあげた足首も、すっかり良くなった。


あと二・三日もすれば、主さまがが新しい仕事をくれるかもしれない。


そんなことを思いながら、コトハはうとうとし始めた。


二通の恋文が風に飛ばされたが、彼女は気付かない。


恋におくてなコトハは、その文脈に見え隠れする男の情念を垣間見ることも出来ず。


ただ、惰眠を貪るのだった。






王女が行方しれずになってひと月。


城はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。


王女の嫁ぎ先となっていた国からも承諾を得、カールが憂いていた事後処理も終わったようだ。


表面上は何事もなく過ぎたように思える、王女の失踪。


けれど、やはり、それは小さな棘となって、王室に刺さり続けるのだった。





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