煩悩
驢馬に蹴られて横死するよりも低確率な
航空機の墜落事故の正にそのとき
もしファースト・クラスに搭乗していたら
白粉臭い客室乗務員と笑って心中するだろう
かの栄辱に塗れた豪華客船に臨場していれば
私は敢然とし、大海の巨鯨の歯石となろう
吐瀉物に塗れたあなたの愛しい指先
嚥下された夥しい数の薬剤
その倍数以上の苦悶を毎日あなたは抱えていた
そこにつけて煩悩とはなんであろうか
百八つでは辻褄があわないのである
あなたは暗欝の泥濘から脱出することが
できないかもしれない
明日の暗欝から