ヘリコプターが旋回してる
日常のすぐ隣に潜む非日常。
真夏の灼熱の中、ただ「うるさい」と苛立っていたプロペラ音が、自分自身に向けられた警告だと知った時、物語は始まります。
天井から滲む赤黒いシミ、見知らぬ番号からの着信、そして屋根の上に潜む「何か」。
身近な部屋が恐怖の渦へと変わる、息をのむサスペンスをお楽しみください。
ある夏の午後。茹だるような暑さの中、報道用と思われる白い中型ヘリコプターが、ある地点を中心にして円を描くように上空を飛んでいた。
上空30、40メートル程だろうか、プロペラ音がけたたましく、僕は勉強に集中できず、非常に困り果て 苛立っていた。
━━事故か?事件か?ら或いは火災でもあったのか、いずれ報道ヘリコプターの出動を決めるくらいのだから、の中に 話題性がある事柄のだろう。
とはいえ 僕はテレビを持っていなかったため、家族の集うリビングにもテレビはなかったので、こういう突発的な事象に対応できるデバイスといえぼ、スマホのインターネットくらいしかなかった。
ところが、そのネットニュース関連にはそういった速報は入ってきていないようなのであった。なんでだろう━━?
苛立ちに任せて画面をスクロールしていた手が、ふと止まる。
ネットに載らないのも無理はなかった。あれは、事件のニュースを追っていたのではない。
ヘリの巨大な影が、わが家の屋根をなぞるようにグルリと円を描いた瞬間、けたたましいプロペラ音に混じって、ピチャリ、と頭上から湿った音が響いた。
屋根の上に、何かが「落ちて」きている。
恐る恐る見上げた天井のクロスが、じわりと赤黒いシミを広げ始めていた。ポタリ、ポタリと落ちてくる滴は、酷く鉄臭い。
その時、僕のスマホがけたたましく震えた。登録のない番号からの着信。画面に出た文字に、息が止まる。
『報道ヘリ乗組員:上空より屋根の上の「それ」を確認中。絶対に外に出ないでください』
じゃあ、あのヘリがカメラを向けて追っているのは、僕の家の上にいる「何か」なのか――?
天井のシミが、めきめきと人の形に広がっていった。
【了】
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
真夏の蒸し暑い部屋、頭上で響く不快なプロペラ音、そして天井のシミ……。普段なら気にも留めないような日常のちょっとした違和感が、もし自分の命を脅かすものだったらという恐怖を描いてみました。
楽しんでいただけたでしょうか。少しでもヒヤッとするような涼しさ(恐怖)をお届けできていれば幸いです。




