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第1話 ごめんなさい。泣いちゃいました。

 獣人たちの暮らしている魔の森で泣いてばかりいる赤狼あかおおかみといつも笑っている白狐しろきつね。


 ごめんなさい。泣いちゃいました。


 悲しいことはたくさんあるんだよ。

 つらいことはたくさんあるんだよ。

 泣いちゃうことだって、たくさん、たくさんあるんだよ。


 獣になってしまう病


 薄暗くて怖くて不気味な獣人たちの暮らしている魔の森の奥。


 赤狼あかおおかみは、いつものように薄暗くて怖くて不気味な魔の森の中で一人で大きな木の幹に背中をつけて、丸くなって顔を見えないようにして、泣いていた。

 魔の森はとても深い森で、葉の生い茂る木々は高くて、大地は凸凹していて、その間に魔の森で暮らしている獣人たちが歩いたり走ったりするための小さな獣道があった。

 少し雨に雨が降ったばかりだったから、木の幹も焦げ茶色の土もまだ濡れている。(魔の森の葉からぽたぽたと雨粒も落ちてきていた。なんだか魔の森も赤狼と一緒に泣いているみたいだった)

 太陽に光がめったに差し込まない(魔の森という名前がこの森についたわけの一つだった)魔の森はほとんど一年中、朝も昼も薄暗い森だった。(夜は闇に包まれるようにして、本当に真っ暗になった)雨もよく降って、魔の森はいつもじめじめと湿っていた。そんな魔の森で獣人たちはまるで魔の森の中に隠れるようにして暮らしていた。

 私はこんなところで一人でなにをしているんだろう?

 そんなことを真っ赤な目をしている赤狼は思った。

 泣いていても、なにも変わらない。神さまは助けてくれないし、奇跡は起こらないし、いいことはなんにもない。

 そんなこと(もうずっと前から)わかっているのに、ぜんぜん涙は止まってくれなかった。悲しくて、悲しくて、どうしようもなかった。

 赤狼は赤毛の長い癖っ毛の髪をしていて、その赤毛の髪を白色のりぼんでまとめてふわふわのポニーテールの髪にしている。獣人の特徴でもある大きなつり目の(いつも泣いてばかりいる)瞳は(泣いていないときも)宝石のような綺麗な赤色をしていた。

 小さな口の中にある白い歯の中には尖った牙のような歯が二つ(狼のように)あった。

 おしりのところにはふわふわの赤毛のしっぽが生えている。

 小柄だけど、獣人らしく力持ちで体を動かすことも得意で魔の森の中を風のように走り回ることができた。

 赤狼は白いミルク色のフードがついているコートを着ていた。赤狼はそのフードを深くかぶって顔を隠すようにして泣いていた。

 赤狼は友達の白狐しろきつねに会いたいって思った。

 世界でただ一人の友達の白狐に会いたくて、会いたくて、しかたなかった。(白狐の大きな胸の中で思いっきり泣きたかった)

 でも、白狐は魔の森のどこを探しても、どこにもいなかった。(いつもなら、すぐに会うことができるのに)

 赤狼の左手には『牙を持つ動物に噛まれたような腫れて赤くなって、血の滲んでいる噛みあと』がはっきりと残っていた。

 それは『白狐が噛み付いた』噛みあとだった。

 魔の森では、獣人のみんなが凶暴化して、そして、『やがてただの獣になってしまう恐ろしい病』が流行っていた。

 白狐も、その恐ろしい病にかかってしまったみたいだった。

 そして赤狼を守るために、その姿を魔の森のどこかに隠してしまったのだった。

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