初夜に「君を愛することはない」と言ってみた
おげひんかも…
結婚式を終えた晩、俺は夫婦の寝室でベッドに座っている妻にむかって
「クラウディア、君を愛することはない」
と言った。
「なぜですか」
聞くのかそれを。神経図太いなオイ。
「だって君、他に男いっぱいいるでしょ」
「ぎく」
「ぎく、じゃないよ。第二王女の君が派手に遊んでいたことは、貴族ならほとんど知ってるよ。それで、ほんとなら王族と結婚できるわけがない身分の、伯爵家の俺に嫁がされたんだろ。そんでもって、これからも前の男との関係は続けるつもりなんだろ」
「もちろんよ。でもせっかく結婚したんだから、あなたとも褥をともにしてあげようと思っていたのに」
「いらないよ。君は好きなように暮らしていい。といっても王家のようにお金は使わせてあげられないけど。子供ができたら俺の子として育てよう。だけど俺は君を愛せない。それだけだ」
「わかったわ。同居人としてよろしくね」
「ああ」
素直に納得してくれてよかった。
実は、俺が彼女を愛せない理由は、男遊びが派手だからだけじゃない。
そのせいで病気にかかることがわかっていたからだ。
俺は転生者で、この世界が前世で読んだ小説と同じであることがわかってる。
そして俺は、今から2年後、妻から性病をうつされるのだ。
この、抗生剤のない時代に!
妻はその後寝たきりになる。その妻を死ぬまで看病するのがこの俺だ。
小説では、美しかった妻はひどい見た目になるが、夫は献身的に看病する。妻は脳もおかされ、会話もままならなくなり、子供のように甘えるようになる。そして夫は「やっと妻が私を見てくれた」と涙するのだ。
バカか。
こんな妻を大事にできるかよ! 病気までうつされるんだぞ!
愛せるわけないだろ!
そういうわけで、「病気をうつされたくないから」という理由での「君を愛することはない」であった。
よく言った俺!
童貞のままはつらいけど、妻が病気になったら、とっとと王家に返品して、新しい妻をもらうんだー! それまでの我慢だー!
◇◇◇
それから10年。うちには顔の違う4人の子供がいる。
妻もピンピンしている。
たぶん、俺の他にも転生者がいたのだろう。
この時代に抗生物質を発明してしまったのだ。
そのおかげで、妻は病気も治り、元気に浮気をくりかえしているのだ。
誰か助けて…! 俺、童貞のまま人生終わっちゃうー!
5人目を妊娠している妻を横目で見ながら、俺の心の叫びがむなしく頭の中でこだまするのであった。
かわいそう。




