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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

『母の眼』

掲載日:2026/06/06

火縄銃を持った狩人が、山の中を獲物を探して進んでいきます。


そして子連れのイノシシを見つけます。母イノシシと4匹のまだ小さな子供を連れています。


狩人は風下に回って、狙いを定めます。母イノシシは、まだ気づいていません。4匹の子供達に自分の乳を与えています。自分の子供達をとても愛おしそうにしています。

狩人は、母イノシシに狙いを定めました。距離は約40間。狩人の腕ならまず外すことはありません。慎重に息を潜めて物音を立てないように呼吸を整えます。

母イノシシは周囲を警戒しています。それと同時に我が子を慈しんで自分の腹から出ないようにしています。


バスーン。


銃声が響きます。イノシシの肩口に命中しました。イノシシは倒れます。

子供のイノシシたちは何が起こったかわからず、右往左往しています。

狩人は母イノシシを獲物として持ち帰るために、立ち上がって近づきました。


その時です。母イノシシは足を踏ん張り、震えながらも立ち上がり、自分の子供たちを自分の後ろに隠しました。

目には気迫が宿っています。絶対に子供たちには指一本触れさせないという気迫です。

母イノシシからは血がどくどくと流れています。足は震えています。しかしその瞳は光を一向に消そうとしません。


狩人は驚いて、急いで2発目を装填し始めました。


母イノシシは睨みつけるだけで動こうとはしません。もう動けないのです。立つだけで精一杯だったのです。

自分の子供達の方を見て、逃げろと頭を振って促します。目には悲しみとものすごい気迫で子供を睨みます。

子供たちは怖気づきながらも、ゆっくり草むらの中に入っていきました。


狩人が2発目を装填し終えて、母イノシシに向けて構えたところ、母イノシシはばったりと力尽きて倒れてしまいました。

しかしその瞳だけはランランと狩人を睨みつけています。


狩人は少し恐ろしくなって後ずさりしましたけども、せっかくの獲物をこのままにしておくのはもったいないと思い、手足を縛り棒で担いで村に向かいました。

狩人が村に向かうその足取りに、子供のイノシシたちの悲痛な鳴き声が響いていた。いつまでもいつまでも。


狩人が村に着くと、早速イノシシを女衆に渡しました。

今日はこのイノシシを解体して、村の全員でイノシシ鍋を囲み宴会だ。久々の大物の獲物でした。


女衆の若い女子は、イノシシに近づくと悲鳴を上げました。死んでいるはずのイノシシの瞳が睨みつけているように見えたのです。


周りの村衆たちは、そんな様子を見て大笑いしました。みんな獲物が手に入って気が緩んでおり、心も大きくなっていました。村衆の誰もが笑顔でいました。


村人たちはナタを持ってきて、イノシシを解体し始めます。イノシシの体に容赦なく鉈を入れます。


イノシシの首に向かって鉈を何回も振り下ろします。

イノシシの手足をナタでバラバラにしていきます。

腹を割いて、内臓を引きずり出します。

乳房からは白い乳が溢れて流れて落ちてきました。


それでもイノシシの目の光は消えません。まるで村衆が自分を解体する様子を、その目に焼き付けているようでした。


若い女衆は恐れをなして家の中に引きこもってしまいました。


大鍋でイノシシの肉を煮る者、

鉄板でイノシシの肉を焼く者。


村の中央の広場には酒も入り、久々の御馳走に賑わいました。


出来た料理から、おもいおもいに肉にかぶりつきました。

宴会は夜遅くまで続きました。


ただ、調理場の隅に転がった目玉だけが、異様な鈍い光を蓄えていました。


女衆の若い女子だけが恐れて、肉も食わず、ただ黙ってその異様な目玉を見つめていました。


次の日の朝、女衆の若い女子が目を覚ますと、村の中はひっそりとしていました。

誰の声もしない、物音ひとつしない。全くの静寂の中に村が沈んでいました。

女衆の若い女子は恐る恐る戸を開けて外に出ました。誰もいない。

周りを見渡しましたが、静まり返って人の姿は全くありませんでした。


ただ、森の方へと続く足跡だけが何重にも残っているだけでした……


肉を食べていない、女衆の若い女性だけが一人残っただけでした。



おしまい

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― 新着の感想 ―
きっと皆さん、猪肉があまりにも美味しくて総出で追加の狩りに行ったんですね…(白目) 子猪も鹿も熊も、一狩り尽くそうぜ…。 ひねくれた私は逆に考えて、母猪の怨念と同調してしまった若い娘さんが「目玉の中…
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