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ボクっ娘幼なじみが本命の最強美少女パイロット、女心を学ぼうとして全部間違える 〜女の子とデートしまくれば百合が理解できるよね(???)〜  作者: そらいろきいろ
002 / 配達人は二度泣く

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#5 レクセル、はじめてのよあそび

「――――さてと、お仕事の話をしましょうね」


 〈イオンテイル・エクスプレス〉の応接室。

 スワンの言葉に頷いて、レクセルは出されたカップをカタリと置いた。


「配送先はパラナル市、荷物は生花20キログラムと郵便物5キログラム。1日で運んで欲しいのだけれど……可能かしら?」

 

「問題ありません」


 即答したレクセルに微笑むスワン。

 表情を崩さず頷いてから、レクセルは少し首を傾げた。


 ……この程度の仕事なら、どの配達人でもできるはず。

 わざわざ遊便を使わなくてもよくないか?


「――――これだけなら特に難しくないのだけれどねぇ。道中、略奪機が出るのよ」


 レクセルの疑問を察したかのように、スワンは地図を取り出した。

 とある地点を赤丸で囲ってから、現在地のファーストと目的地のパラナルを線で結ぶ。


 線は赤丸のど真ん中を突っ切っていた。

 

「……危険空域を突破するルートですか」

 

「ごめんなさいねえ……迂回したいのだけど、生花がだめになってしまうわ。時間はロスできないの」


 戦闘機で配達人を襲い、荷物を奪う略奪機。

 その対策は、そもそも遭遇を避けること。

 

 配達人の機体にも機銃があるが、使われることはほとんどない。

 荷物を積んで重くなった機体は動きが鈍く、まともにやり合っても勝ち目が薄いためだ。

 

 略奪機に襲われたならとにかく逃げる。

 それが一般的な配達人の常識であった。

 あえて危険空域に突入するなど、自殺行為と同じ。


 …………しかし。

 危険を冒してでも荷物を届けるのが、配達人の上澄みたる遊便に課せられた役目である。

 

「レクセルさんにお願いしたいのは、略奪機の襲撃を振り切るか撃退し、遅れなく配達を完了させること。引き受けてくださる?」

 

「もちろん。お任せください」

 

「――――ふふ、流石は遊便さん。頼もしいわね」


 真面目な顔で頷くレクセルに、スワンはほっと息をついた。






 看板のネオンがびかびか光り、月明かりを弾き出す。

 パブからは陽気な笑い声が響き、浮かれた空気が流れる夜の街。


 蛍光色の光を載せて、プラチナロングが夜風になびく。

 レクセルは壁にもたれかかり、行き交う人々を眺めていた。

 

 任された荷物が〈イオンテイル・エクスプレス〉まで届くのは2日後。出発は明々後日の早朝だ。

 それまでファーストへ滞在することになったレクセルには、ビジネスホテルが割り当てられた。


「――――ずっと飛んできて疲れたでしょう。今日はゆっくりお休みなさって」


 スワンは気を遣って、そんな言葉をかけたものの。

 レクセルにはまだ、やらねばならないことがある。

 ホテルの部屋で制服のツナギを脱ぎながら、決意を込めて呟いた。


「――――初ナンパ、成功させてみせる」


 迷いのない瞳。止めるものは誰もいない。

 ジーンズと革ジャンを着込み、レクセルは夜の街へと繰り出したのだった。


 ……と、威勢よく出てきたのはいいものの。


「なんて声をかけるか……」


 レクセルはナンパなんてしたことがない。

 むしろされる側である。そして断る側でもある。

 記憶を漁って出てくるのは、ムカつく誘い文句ばかり。

 女心を理解するためのデートなのに、相手を不快にさせたらどうすんだ……と悩んでいた。


 ――――しかしその姿は、はたから見れば。

 物憂げにたたずむアンニュイな美少女で。


「……わぁ! おねえさんすっごくかわいいっ♡」


 夜の街では放っておかれるわけがなかった。


 声の方へ振り向くと、そこにいたのもふもふな生き物――――もとい少女であった。

 ふわふわと広がる桃色の髪、ころんと丸い大きな瞳。口調も相まって、柔らかな印象が伝わってくる。

 背はレクセルより頭1つ分も低い。


「…………子供は寝る時間じゃないの?」

 

「ひっどぉい、これでもハタチなのにー!」

 

「ハタチ? 本当に?」

 

「…………あと3年でぇ」

 

「17じゃん――――って同い年か」

 

「わぁうれし♡ てかおねえさん、意外とワイルドな口調なんですね♡」


 くしくしと少女は笑う。

 悪い? とレクセルがムッとすると、ふわふわ髪を揺らして首を振った。

 そうだ! なんてわざとらしくポーチを開けて、取り出したのは2枚のチケット。


「わたし、これから映画観に行くんですよぉ。おねえさんも一緒にどうですか♡」

 

「……なんで2枚買ってんの」

 

「こういう出会いがあるかもって! でも、こんな美人さんに会えるとは思ってませんでしたぁ♡」


 ぎゅうと腕を取られ、レクセルは思わずびくりと跳ねた。

 ハレーはともかく、他人からのスキンシップには慣れていない。


「あれ、緊張しちゃってますー?」

 

「別に。行ってあげてもいいけど」

 

「わぁ! やったぁ♡」


 レクセルは誘いに乗って誤魔化した。






「わたしレヴィっていうんです♡ おねえさんは?」

 

「レクセル」

 

「わ、頭文字お揃い♡ レクさんって呼んでもいいですかぁ?」

 

「……好きにして」


 グイグイ来るな……。

 でもナンパするなら、これくらい前のめりじゃないと駄目なのかも。

 るんるんと擬音が聞こえてきそうな横顔を眺めつつ、レクセルは心のノートにメモを取った。


「そういえば、レクさんってファーストの人じゃないですよね? だってこんな美人さんが住んでたらウワサになりますもん!」

 

「まぁ、ファーストには仕事で来てるからね」

 

「ほへぇ、なんのお仕事です?」

 

「配達人だよ」

 

「わぁ、かっこいい! レクさんにぴったりですね♡」

 

「ぴったり――――なんで?」

 

「えーだって美人さんと飛行機でしょ? 絵になるじゃないですかぁ――――あ、着きました!」


 ちかちかと瞬く巨大な電飾。

 古き良き劇場を思わせる佇まい。

 戦後復興の象徴かのごとく、贅を凝らした意匠の建物が、目の前にそびえ立っていた。


「うわ、すご……」

 

「ふふっ」

 

「…………なに?」

 

「びっくりしてるレクさんがかわいくて♡ でも恥ずかしいことじゃないですよ、初めて来た人はみんな同じ反応するんです♡」


 なんたってファーストで一番大きな映画館ですもん――――と上機嫌なレヴィ。

 レクセルは表情に迷い、唇をぴくぴくさせた。

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