#1 罪深き少女、その名はレクセル
あまりギスギスしない、おバカな百合です。
たまにトップガンや007くさくなります。
10万文字の完結まで書き終えていますので、安心してお読みください!
とある地方都市ソフィア。
太陽が沈み、ガス灯が照らすアスファルトの道を、仕事帰りの人々が行き交っている。
疲れて猫背気味な人混みの中を――――颯爽と歩く少女が1人。
姿勢がよすぎて、すごく目立ってる奴がいた。
彼女の名はレクセル。主人公である。
プラチナのロングヘアが、さらりと肩を撫でる。
軽く手で払うと、その横顔があらわになった。
「うわぁ……綺麗なひと……」
「おお」
「うお」
すれ違った人々が思わず呟く。
無意識のまま立ち止まり、目で追ってしまう。
スカイブルーの瞳に、すっと伸びた鼻筋。
妖精のような美貌を見つめていると、さすがにレクセルは振り向いて――――。
「…………なんですか?」
少し尖った視線で尋ねた。
「あっごめんなさい……!」
慌てて視線を逸らす者。
しれっと無関係を装う者(今更遅い)。
目を奪われたままの者……。
レクセルは放っておくことにした。
知らぬうちに3人の男性(おぉっ♡)、5人の女性(まぁっ♡)、1匹の犬(ワオンッ♡)を虜にしながら、街灯が並ぶ下をこつこつ進み、信号を渡る。
ぐおおんと頭の上を通り過ぎた飛行機を見上げながら、角を曲がると。
――――目の前で、若い男女が揉めていた。
「――――いいじゃん、ご飯奢ってあげるからさ!」
「だから、ボクは人と待ち合わせしてるんだって! ナンパなら他の子を当たってよ!」
「お、ボクっ娘? いいね、ほんの少しだけ付き合ってよー」
ボーイッシュな少女が迷惑そうに身を捩る。
ツンツンな毛先の、真っ黒なウルフカットがばさりと揺れた。
見覚えのあるその姿に、レクセルはチッと舌打ちをして、つかつかと歩み寄る。
2人の間に割り込んで、がしっと少女の肩を抱いた。
「――――私の連れになんか用?」
「レクシー!」
「ごめんハレー、遅くなった」
ぱあっと笑顔を咲かせる少女――――ハレー。
男は一瞬呆気にとられていたが、すぐにヘラヘラ笑いを取り戻す。
「なーんだ、相手も女の子じゃん! なら3人でご飯行こうよ――――って」
「…………?」
「キミめっちゃかわいくね!? ねぇオレと付き合ってみない?」
「見境のないヤツは嫌い。それに私、この子と付き合ってるから」
「「えっ」」
男は驚いた。
ハレーも驚いた。
付き合っていないからである。
……もしかして、ボク記憶喪失? ボクってレクシーと付き合ってたのかな。
割と本気で悩み始めたハレーを、レクセルは無理やり引っ張る。キッと男を睨みつけた。
「そういうことだからどっか行って。ほら行こ、ハレー」
「う、うんっ……!」
どことなく嬉しそうに、ハレーが応える。
ばたばたと去っていく2人を、男はぼーっと見送っていた。
しばらくして、ぼそりと一言。
「ボクっ娘百合BSSも悪くねーな……」
――――男は新たな扉を開いた。
「あのぉ……レクシー」
「ん、どうした?」
「ボクたちって、いつから付き合ってるんだっけ……?」
レクセルはぽかんとした。
目をぱちぱちと瞬いて、あぁさっきのことかと思い至る。
「……嫌だった?」
「ううん嫌じゃないよ! えへへ、むしろ付き合うならレクシー以外考えられな――――」
「たしかにナンパ避けとはいえ、冗談で付き合ってるとか言うのはよくなかったな……」
「――――あふぇ?」
「ごめんハレー、私が軽率だった」
緩んだ口元を直しきれず、ハレーが腑抜けた声を漏らす。
脳内で繰り広げられていたウェディングシーン――それも誓いのキスの場面――がぱちんと弾けた。
現実は非情である。
「じ、冗談……? 付き合ってないの?」
「? 当たり前だろ」
「…………な、なぁんだ! あはは、そうだよね! なーんだぁ」
あせあせと笑うハレーは、すこし残念そう。
ごくりと喉を鳴らし、手を握りしめる。
冗談ではあったけれど、と自分に言い聞かせてから、こっそり考えた。
――これってレクシー的にも、ボクと付き合うのはアリ……ってことだよね?
ドキドキ、心音が大きくなってくる。
隣のレクセルに聞こえてないか不安になりながら、ハレーは決意した。
――――今日の夜、想いを伝えよう。
「――――レー。ハレー?」
「ひゃ! なっなに、レクシー?」
「なにって、家着いたけど」
大丈夫? と覗き込んでくるレクセル。
ハレーはぶんぶん首を振った。
「大丈夫っ! 考え事してただけ!」
「そっか」
それ以上気に留めた様子もなく、レクセルは玄関のドアを開ける。ほっとしたハレーも後に続いた。
ばたんと閉まったドアの表札は、2人分の名前が書かれている。
レクセルとハレーは幼なじみ。
親友同士、仲よく一緒に暮らしていた――――のだがそれは今日までのことである。
ハレーは爆弾を落とそうとしていた。
読んでいただき、ありがとうございます!
本日は世界観や雰囲気がわかる3話まで更新!
次は18:00、19:00です!
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