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救い?

「失礼致します」

 窓枠を乗り越えて入ってきたのは─知らない男だった。

 年は俺と同じか少し若いぐらい。良く言えば整ってる、悪く言えば特徴のない顔立ちをしている。

 しかし、インパクトがあるのは着てる服。裾の長いローブに、なんかびっしりと気味の悪い紋様が縫い込まれていた。

 シーシェは男を見て息を呑み、

「恋人三十六番のルメンモス=ルベラルク殿!!」

 俺より大分番号が早い。

 男─ルメンモスはシーシェの言葉を否定も肯定もせずに淡々と、

「お久しぶりです。シーシェさん

 師匠からの伝言です

 『あんまり恋人漁りすると討伐対象になんぞ』と」

「ニレイミト殿が!?」

「え!?」

 俺はシーシェが叫んだその名前に反応する。

 ニレイミト、それは俺から親父のペンダントを奪った魔物の名前だ。そいつを追うために俺は旅をしている。

「ニレイミトを知ってるのか!?」

「ニレイミト殿は殿堂入りだ!!」

 なんのだよ!?

 シーシェは恍惚と、

「初めて会ったその日、ニンニク畑に蹴り落とされ、日差しの元で灰になるまで引きずり回された挙げ句、灰を川に捨てられたのも良い思い出だ」

 どっちも怖ぇ!!

 っていうかなんでそんな目に遭ったのに今でも普通に生きてんだよ、こいつ。なんかもう弱点克服してねぇか。

 でも、今はそれに突っ込みを入れている場合ではない。

 俺はルメンモスに詰め寄って、

「ニレイミトは今どこにいるんだ!?」

 一瞬間があり、ルメンモスは肩を大袈裟にすくめて、

「さあ?」

 明らかに知ってる「さあ」だろ!これ!!

 何故か一瞬俺の背後に視線を向けたような気がするが、振り返っても何もない。

 しかし、俺がルメンモスを更に問い詰めるより前に、シーシェが間に入ってきて、

「その勢い···貴様、まさかレイミト殿を狙っているのか!?」

 まあ、ある意味狙ってるけど。

「なるほど、私の恋人にして恋敵というわけか···」

「それは違う!」

 しかし、当然シーシェは俺のいうことなんか聞きやしない。

「まさか、私からニレイミト殿を奪い取るという精神的苦痛を味わわせようと!?

 くっ、そんなことをされたら、興奮と悦びでどうなってしまうことか!」

「絶対やらねぇから安心しろ」

「しないのか···」

「がっかりすんな!」

 シーシェはしょんぼりと項垂れる。

 ともあれ、もう戦う気も俺を監禁する気もないようだ。

 ふと、そんな俺たちを無表情で見つめているルメンモスが目に入る。

 ニレイミトの居場所を聞き出せなかったのが癪だが、助かったんだし、感謝はした方が良いよな。

 俺はルメンモスの方を向いて、

「礼は言っとく。お前のおかげで···」

 しかしルメンモスは俺の台詞を遮って、

「今後、こんなことがないようにしてください

 迷惑なので」

 そう言って、俺の方を振り返ることなく、窓から外に出ていった。

 ·····助けてもらってなんだが、感じの悪い奴だな。

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