事情?
どうしようもない寒気を感じて、俺は強引にシーシェを振りほどく。
逃げよう。
即そう思ってシーシェと離れて手近な窓に手を掛けるが、開かない。鍵がかかってるようには見えないのに。
「無駄だ。扉や窓は私の魔力で封じてある」
用意周到!?
「そもそもなんで殴られるのが良いんだよ!?」
俺がキレながら聞くと、シーシェは突然真顔になり、
「我ら吸血鬼は弱点が多い」
と、突然言い出す。
でもまあ、確かにそうかもしれない。
日差しの下には出られないし(シーシェは出てたが)、十字架やニンニクにも弱い。俺が知ってるだけでもこれだけ弱点がある。
「日差しの下に出れば灰になり、十字架に触れれば火傷し、ニンニクはそばに寄るだけで気分が悪くなり、心臓に杭を刺されれば死んでしまう···」
最後のは吸血鬼でなくても死ぬと思うが、それだけ弱点があると確かに辛いだろう。
しかし、シーシェはがばっと顔を上げて、
「ならば、それらの痛みをむしろ快感だと思えるようになれば良いと結論付けたのだ」
「なんでそんな結論に」
こいつなりの自己防衛策なのかもしれないが、思考が明後日の方向に行ってるぞ。
「それからは日光浴するのが日課になった」
さっき煙出しまくってたあれか。
「そんな私を気持ち悪いと言う者もいた」
それは···気の毒だが仕方ない気もする。
「そう言われると興奮して、すぐさま恋に落ちた」
「なんでだよ!!」
「今まで何度も恋をしたが···」
それは本当に恋か?
「城に招待すると、皆最後は罵り言葉を吐いて出ていってしまう」
何をやらかしてそうなったのかは聞きたくない。
「罵られるのは興奮するが···」
すんな。
「しかし、そんな悲しみを経て、貴様に出会えた」
俺は会いたくなかった。
「以前の恋人たちが何故逃げてしまったのかはわからないが·····」
俺にはわかる。
「貴様を千五百七十八番目の恋人にしてやろう」
恋人多いな!!
「結構です」
しかし、シーシェは俺の返答なんか聞いちゃいなかった。
「貴様を千五百七十八番目に愛すると誓おう」
いや、その順番だとむしろ嫌われてるように聞こえるが。
「一緒にここで暮らそう。─永久に」
絶対嫌だ。
駄目だ、こいつ。もう付き合ってらんねえ。
気絶するまでぶん殴ろう。やりすぎるとますます好かれる可能性はあるが、背に腹はかえられない。
俺がまた変身しようとしたそのとき、窓が開いた。




