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影踏みのルミナス  作者: antild


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世界の境界 ― 決着と涙

 世界が震え、

 屋上はもはや“学校の屋上”ではなかった。


 透と陽斗の共鳴の光が地平線まで広がり、

 アインの影が空気を塗りつぶし、

 現実と精神世界の境界が入り混じる異世界のような空間になっている。


 風が逆流し、

 視界は白と黒の線が走り続け、

 足元は揺れ、

 空は割れて光が滲んだ。


「透ッ!!!」


「陽斗ッ!!!」


 二人の声は完全に重なっていた。


 透の胸から溢れる光は、

陽斗の心に触れた時よりも、

まだ進化していた。


(――共鳴が……さらに深くなっている……!)


 透は悟る。


 これはもう“二人の力”ではなく、

二人の心そのものだ。


 恐怖も、弱さも、優しさも、

 すべてを共有した二人だからこそ出せる光。


 アインでさえ、その光を正面から浴びてたじろぐ。


「な……これは……

 こんな……感情の力が……!!」


 アインの影が焼けるように白く光った。


 アインの身体は影と人間の境界が崩れはじめ、

黒い煙のように揺らぎ出す。


 アインは歯を食いしばり、強く踏み込む。


「まだだ……!!

 僕は“選ばれた存在”!!

 感情の根を超えた“新しいヒト”!!

 僕は……世界の心そのものに……!!」


 だが――


「お前は違う!!」


 透が叫ぶ。


「お前はただ――

 “心を捨ててしまったヒト”だ!!」


「そのとおりだ、アイン!」


 陽斗も叫ぶ。


「透の心に触れてみろよ!!

 お前みたいな怪物が絶対持てない“温かさ”があるんだよ!!」


 アインの体がさらに歪む。


「やめろ……

 僕は……そんなもの……!」


「そんなもの?」

透が叫ぶ。


「そんなものが……

 俺たち人間にとって“すべて”なんだよ!!」


 アインが影の触手を伸ばすが、

透と陽斗の光が瞬時に飲み込む。


 影は破れ、

アインの腕が崩れ、

全身に亀裂が走る。


「こんな結末……認めない……!!

 透!!

 君は僕と同じであるはずだ!!!」


「違う!!」


 透が光を強めた。


「俺は“陽斗”と一緒だ!!!

 お前じゃない!!!」


 陽斗が透の手を握り返す。


「透は……俺のだ!!!」


 アインが絶叫した。


「やめろォォォォォ!!!!」


 その時、

アインの影の一部が暴走し、

凪の結界へ集中攻撃を始めた。


「くっ……!!」


 凪の身体が大きく後ろへ押される。


「凪!!」


「う……っ……いい……

 ここは私が……!!」


 だが明らかに限界だった。


 凪の膝が崩れ落ちる。


「凪!!しっかりしろ!!」


「凪……!

 お前がいなきゃ……透は……!」


 凪は透に向けてかすかに微笑んだ。


「透……

 あなたが“世界”じゃなくて“陽斗”を選んだ瞬間……

 私は……誰よりも安心したんだよ……」


「凪……!」


「透。

 あなただから助けたかった。

 仲間だからじゃない……

 あんた自身を……好きだから……」


 その言葉に透は目を見開く。


 アインの暴走影が結界を破り、

凪の身体が投げ出される。


「凪ッ!!!」


 透が叫ぶ。


 だがその瞬間、

陽斗が透の腕を掴み、

アインの影から守るように引き戻した。


「透!!

 今は凪に行くな!!

 アインを倒さなきゃ……

 凪を守る力も残らねぇ!!」


 陽斗の叫びは、

強く、優しく、痛みがあった。


「透……頼む……

 二人で……終わらせよう……!!」


 透の瞳に涙が浮かぶ。


「陽斗……

 お前は……強いよ……」


 透と陽斗の光がさらに膨張する。


 白と金の光。

 それはもう“能力”という枠ではない。


 世界が震える。


(陽斗……

 お前の心が……俺に流れ込んでくる……

 俺の心も……陽斗に……)


 二人だけの共鳴領域が広がる。


 アインが怯えたように後退した。


「やめろ……

 それは……危険すぎる……!!

 そんな共鳴は……人間の許容量を超えている……!!

 二人とも、死ぬぞ!!」


 透は首を振る。


「死なない!!

 陽斗がいる!!」


「透がいる!!」


 二人の声が響いた瞬間、

空が完全に割れ、光があふれた。


「いくぞ透!!」


「ああ、陽斗!!」


 二人が手を組む。


「共鳴――」


「フルリンク!!!!」


 光が全方位に解き放たれた。


 アインの影が焼け、砕け、

人の形に戻ろうとするが――


「やめろ!!!!

 僕は……!

 僕は“世界”を……!!!」


「世界なんか知らない!!」


 透が叫ぶ。


「俺は――陽斗と生きたい!!」


「そして俺は透と生きる!!」


 二人の光がアインを包み込む。


 アインの身体は光と影の中で崩れ、

叫び声が風にちぎれ――


 最後に、アインはかすかに呟いた。


「……だから……君たちのような“感情”が……

 羨ましかったんだよ……」


 そして――

アインの身体は光に溶けて消えた。


 激戦が終わり、

世界はゆっくりと元の屋上へ戻りつつあった。


 風の音だけが残る。


 透と陽斗は地面に倒れ込み、

しばらく言葉も出せず息を整えた。


「透……

 生きてるな……?」


「陽斗こそ……」


 陽斗は涙と笑みが混ざった複雑な顔で、

透の胸を軽く叩いた。


「バカ……

 死ぬなよ……」


「死なないよ……

 お前が引き戻してくれたから……」


 二人は互いの手をぎゅっと握った。


 その少し離れた場所で――

凪が意識を失ったまま倒れていた。


「凪!!」


 透と陽斗は慌てて駆け寄る。


「凪!!

 しっかり……!!」


 凪の胸はわずかに上下していた。


 命はある。


 透は涙を流しながら凪の手を握る。


「凪……

 ありがとう……

 お前がいなきゃ……俺たち……」


 陽斗は空を見上げた。


「終わった……のか……?」


 透は静かに答えた。


「まだ……“終わってはいない”。」


「え?」


「アインが言った。

 “次の暴走者ロストが現れ始めてる”って……」


 陽斗の表情が引き締まる。


「じゃあ……まだ戦いは続くってことか」


「うん……でも……」


 透は陽斗の手を握る。


「俺は一人じゃない。

 これからも、お前が隣にいるなら……

 どんな未来でも……行ける。」


 陽斗は強く頷いた。


「透。

 俺も……ずっと隣にいる。」


 風が二人の頬を優しく撫でた。


 新しい世界の幕が、静かに開き始めていた。

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