最終決戦 ― 「透と陽斗、世界を変えるか」
アインの影が屋上を覆いつくした。
まるで夜そのものが降りてきたかのように、
空が黒く染まり、風が凍りつく。
「陽斗、透の後ろに!」
凪が叫ぶと同時に、
アインの影が槍のように伸びてきた。
「くっ……!」
透は陽斗をかばい、胸の奥に光を集中させる。
(押し返せ……!
俺はもう逃げない!!)
光が噴き出し、
アインの影を弾き飛ばす。
だが。
「弱い。」
アインの影は透の光をねじ曲げ、
逆流させるように押し返してきた。
「……っ!!」
「透!!」
陽斗が必死に透を支える。
アインは淡々と告げた。
「透。
君は“まだ本当の力”を使っていない。
陽斗を守るだけでは足りない。
“世界”を救える力を――使え。」
「使わない!!
そんな力、俺はいらない!!」
「では陽斗は死ぬ。」
アインが指を鳴らすと、
陽斗の影が縛られ、胸のあたりへ黒い杭が向かった。
「っ……!」
「透ッ!!!」
陽斗が呼ぶ。
「陽斗!!!!」
透の中で、何かが切れた。
透の体が激しく光りだした。
(陽斗を……失わせない!!)
その瞬間――
透の影が白く燃え上がるように変化する。
「……!!」
凪が目を見開いた。
「透!!
あなた……“核”が開いてる……!!」
(核……?
俺の力の、中心……?)
透の感情が陽斗への強い想いに集中すると、
光が一瞬で屋上全体に広がった。
「なんだ、この……!」
アインの影さえ後退する。
透の白い光――
それは“共鳴の力”が暴走ではなく、
正規の形で開いた証。
アインが目を細める。
「……やっとだ。
透。
その力こそ“世界の鍵”だ。」
「うるさい!!
俺は陽斗を守るために力を使うんだ!!
世界のためじゃない!!
俺が守りたいのは……
“陽斗の心”だけだッ!!」
光が爆発。
「透!!」
「陽斗!!」
二人の叫びが重なった瞬間、
陽斗の心の光と、透の光が混ざり合った。
陽斗は透の腕を掴む。
「透、お前が俺を守るなら……
俺もお前を守る!!
一緒に戦うんだろ!!」
「陽斗……!!」
ふたりの胸から“共鳴の光”が同時に走る。
白と金が混ざり、空すら揺らすほどの強烈な輝き。
凪が目を見開く。
「これが……
二人の“共鳴の完成形”……!」
アインは初めて焦りを露わにした。
「やめろ……
その共鳴は“僕の計画の外側”だ!!」
「だから何だ!!」
透が叫ぶ。
「俺たちが決めた道だ!!!」
「二人の絆は……
俺たちが選んだ未来だ!!!」
陽斗も吼える。
二人が同時に走り出す。
「透!!」
「陽斗!!」
光と影が激突し、
屋上全体が閃光に包まれた。
影の爆風の中、アインはフードを完全に脱ぎ捨てた。
その身体は――
“完全な人間ではなかった”。
黒い紋様が皮膚に走り、
瞳孔は左右で色が違い、
背中からは影の触手が生えている。
「これが……アインの……!」
凪が震える声で言う。
「……“感情の根”に取り込まれた者の末路……
アインは……半分“感情の怪物”になってる……!」
アインは笑った。
「君たちのような“人間の感情”はとっくに捨てた。
僕は世界を洗うために、人である必要はない。」
「アイン……
お前は……!」
「透。
君にも同じ場所へ来てほしい。
“人の心”ではなく“世界の心”を見る者へ。」
「嫌だ!!」
透と陽斗が声を揃える。
「俺は“陽斗”の心に触れたいんだ!!」
「俺は透が“透”でいてくれなきゃ困るんだよ!!」
アインの表情が波のように揺れ、歪んだ。
「……邪魔をするな……
透は……僕のものだ……
僕が導く……!!」
影の触手が何十本も噴き出す。
その触手が透と陽斗に襲いかかる直前――
凪が前に飛び出した。
「させないッ!!」
凪の両手が青い光に包まれ、
巨大な“結界の壁”が出現した。
透が叫ぶ。
「凪!!危ない!!」
「ここは……私が抑える!!
透、陽斗!!
あなたたち二人で――
アインを“終わらせて”!!」
「凪……!!」
アインの影が結界を破ろうと叩きつける。
「無駄だ、凪。
君の力では――」
「分かってる……
でも時間は稼げる!!」
凪の体が震え始める。
結界を張り続ける負荷で、膝が崩れそうになっていた。
「透……早く……!!
あなたたちの光で……決着をつけて!!」
透と陽斗は凪の背中を見る。
その姿は小さくても、強かった。
「凪……ありがとう……!」
「行くぞ、透!」
「うん!!」
二人はアインへ向かって走る。
アインの影が迎え撃つ。
「来い……!!
二人揃って来るがいい!!
その感情の奔流ごと――
僕のものにしてやる!!!」
透と陽斗の手が強く結ばれる。
「陽斗!!」
「透!!」
同時に叫ぶ。
「共鳴――解放ッ!!」
圧倒的な光が世界を飲み込み、
アインの影と激突し――
屋上が、街が、空が震えた。




