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影踏みのルミナス  作者: antild


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黒幕アインとの激突 ― 奪われた選択

 屋上を埋め尽くすように、

アインの影が“開いた口”のように蠢いていた。


「透を連れて行く……?」

 陽斗がアインを睨みつける。


「冗談じゃねぇ……!!」


 透の手を引き寄せ、陽斗は前へ出た。


「透は……俺が守る!!」


 アインは静かに笑う。


「陽斗。

 君には守れないよ。

 透の力は――君の理解を超えている。」


「関係ねぇ!!

 俺は、透を……!」


 陽斗の叫びを遮るように、影が襲い掛かった。


「陽斗!!」


 透は反射的に陽斗を抱き寄せ、

胸の奥から光を放つ――


 だがその光と影が触れた瞬間、

透の体に激痛が走った。


「……ッ!!」


「透!? おい大丈夫か!!」


 透の膝が崩れ、呼吸が乱れる。


(なんだ……?

 影に触れただけで……心臓が締め付けられる……)


 凪が鋭く叫ぶ。


「透!!

 アインの影には“反共鳴”が仕込んである!!

 触れるだけで、あなたの感情能力を“逆流”させる!」


「逆流……?」


「感情を読む力の根を攻撃されてるのよ!!

 透の力はアインにとって“主食”みたいなものだから!」


 アインはゆっくりと近づく。


「透。

 本当は君も気づいているはずだ。

 君の力は“守るための力”ではなく――

 “導くための力”だと。」


「導く……?」


「そう。

 君は“心の核”に触れられる。

 誰も触れない領域へ、君だけが踏み込める。」


 アインの手が伸びる。


「だから、君は陽斗のそばにはいられない。

 心が壊れる前に――

 僕が連れて行く。」


 その手が透に触れようとした瞬間、


「触んじゃねぇッ!!」


 陽斗がアインの腕を叩き落とした。


 アインはわずかに眉を上げる。


「陽斗……

 君は“ただの人間”だ。

 なのに――

 どうしてここまで透に執着する?」


 陽斗は即答した。


「執着じゃない。

 透は……俺の大切な奴なんだよ!!」


 その声は震えているのに、力強かった。


 アインは面白そうに笑う。


「大切……?

 では証明してごらん。」


「証明……?」


「“言葉”では意味がない。

 本物の感情は、心そのものに刻まれるものだ。」


 アインが手をかざすと、

影が陽斗へ向かって渦を巻いた。


「陽斗!!」


 透が飛び出そうとするが――

アインの影が透の足元を絡め取り、動きを封じた。


「くっ……!!」


 影の渦は陽斗の胸に触れ、

陽斗の身体がビクッと震えた。


「やめろ!!!!」

透の叫びは届かない。


 陽斗は胸を押さえ、苦しそうに膝をついた。


(陽斗……!?)


 アインは冷たく告げる。


「陽斗の“恐怖”を増幅させた。

 透に向けた依存、渇望、そして恐怖――

 すべて今、暴れ出している。」


「っ……透……!

 俺……また……

 “透を失う”……って……!!」


 陽斗の身体がひどく震え、

目の焦点が合わなくなる。


 その様子に、透の心が凍り付く。


(俺のせいだ……

 陽斗が苦しんでる……

 俺を守ろうとして……

 俺が……!)


 アインが透を見下ろす。


「透。

 これが現実だ。

 君が陽斗のそばにいる限り――

 陽斗は“自分の心を保てない”」


「……っ……!」


「君の力は強すぎる。

 君と近いほど、陽斗の心は揺れる。」


 透は息を呑んだ。


「だから君は――

 陽斗の人生にとって、もっとも危険な存在だ。」


「違う!!」


 透は影に絡め取られながら叫んだ。


「俺は陽斗を痛めつけたいわけじゃない!!

 俺は……陽斗を救いたいんだ!!」


 アインは首を横に振った。


「だが、結果は“破壊”だ。

 強すぎる絆は、互いを壊す。」


 陽斗の苦しむ声が、透の胸をえぐる。


「透……助けて……

 俺……怖ぇよ……!

 お前を失うのが……!!」


「陽斗……!!」


(俺がそばにいることで……

 陽斗は苦しんでいる……?

 本当に……?

 俺は……俺は……!!)


 透の精神が揺れ、

影の力が透の心に侵入しようとした――


しかし。


「透!!

 “手放すな”!!」


 凪の声が鋭く響いた。


 彼女は透と陽斗の間に飛び込み、

掌に淡い青の光を宿していた。


「凪!!危ない!!」


「黙ってて!!」


 凪の光が、アインの影を打ち払う。


 アインはその光を見て、興味深そうに目を細めた。


「……なるほど。

 “感情屏障エモーション・シールド”の素質か。

 君も実に興味深い。」


「喋るな。

 透にも陽斗にも触らせない。」


 凪の声は震えていない。

 けれど肩はわずかに揺れていた。


(凪……怖がってるのに……

 俺たちのために……!)


 彼女は振り返り、透を睨んだ。


「透!!

 “陽斗が苦しむ原因”はあなたじゃない!!」


「……え?」


「陽斗自身の心の傷!

 あなたを失う恐怖!!

 それをアインが増幅してるだけ!!」


「でも……俺のせいで……」


「違う!!

 透がいなければ、陽斗はもっと早く壊れてた!!

 透がいたから……

 陽斗は今、生きてるの!!」


「……っ!」


 胸に突き刺さる言葉だった。


(俺が……陽斗を……“生かしていた”?

 陽斗は……俺がいないと……?

 本当に……?)


 陽斗が涙をこぼしながら叫んだ。


「透……!!

 俺は……お前がいなかったら……

 もっと早く壊れてた!!!

 お前がいてくれたから……

 俺は生きてんだよ!!」


 透の視界が一瞬かすみ、

胸の奥で何かが弾けた。


(陽斗……俺……)


 透は影を振り払うように両手を広げ、叫んだ。


「アイン!!

 俺はお前なんかに従わない!!」


 アインの瞳がわずかに揺れた。


「……ほう?」


「俺は陽斗の隣にいたい!!

 陽斗が苦しむなら、何度でも支える!!

 壊れそうなら、手を握って引き戻す!!」


 透の胸の奥が、光に満ちていく。


「透……」


「それが――俺の“選んだ生き方”だ!!

 世界とか、血とか関係ねぇ!!

 俺は俺の“大切な人”を守りたい!!」


 アインは透を見つめ、笑みを消した。


「……そうか。

 なら――計画を切り替える。」


 アインの声が底冷えするように冷たくなった。


「“陽斗を壊して”透を手に入れる。」


「!?!?!?」


「透。

 君が陽斗を救い続けるというなら――

 陽斗の心を壊せば、君は迷わずこちらへ来るだろう?」


「やめろ!!!!」


「透が自分から来ないなら、

 君を“陽斗から引き剥がす”。

 どんな手段を使ってでもね。」


 凪が叫んだ。


「透!!

 アインを止めないと……陽斗が標的にされる!!」


 陽斗は苦しげに唇を噛む。


「……透……

 俺……いつか……

 お前のために壊されるのか……?」


「陽斗!!違う!!

 そんなこと絶対にさせない!!」


 アインの影が再び広がり、

屋上全体を覆い始めた。


「さぁ透。

 君は世界を選ぶか――

 陽斗を選ぶか。」


「俺は……!!」


 透は陽斗を背にかばい、

アインへ向き直った。


「俺は“陽斗”を選ぶ!!

 世界じゃない!!

 未来でもない!!

 お前でもない!!

 陽斗だ!!!」


 アインの顔が、初めて怒りに歪んだ。


「ふざけるなァァァァッ!!!」


 影が爆風のように押し寄せ――


最終決戦が始まった。

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