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振りほどけない静けさ
アインの問いが、空気を凍らせた。
「透。
世界は“感情崩壊”の時代に入る。
君はどちら側に立つ?」
透の心臓はゆっくりと、しかし重く脈打っていた。
(世界……?
そんなもの、急に言われても……)
陽斗が透の手を強く握る。
「透は俺の隣にいればいい。
そんなでかい話に引きずられる必要なんてねぇ」
陽斗の声は荒く、しかしどこか怯えにも似た色が混じっていた。
(陽斗……
俺が“どちらか”を選ぶことを……怖がってるのか)
一方で凪は、ぎゅっと唇を結んで言う。
「陽斗、簡単に言わないで。
透は“コーラスに狙われる力”を持ってる。
透自身がどうしたいかを選ばなきゃ……何も始まらない」
「……くっ……!」
陽斗は歯を食いしばり、透を見た。
「透……
お前は……どこに行きたい?」
透は二人を見た。
陽斗の手の温かさ。
凪の揺るがない瞳。
アインの暗い笑み。
三者三様――だが、全員が透を“必要”としていた。
(俺は……
どこに立てばいいんだ……?)




