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帰り道、風が運んできたもの
二人は並んで歩きながら校門を出る。
住宅街に向かう坂道に夕暮れの風が吹き抜け、木々の葉が揺れた。
透は思い切って口を開く。
「陽斗……最近、何かあった?」
「ん? なんで?」
「なんとなく……元気ない気がする」
陽斗は笑った。
だがその笑みは、ほんの少しだけ寂しさを帯びている。
「お前って、本当にそういうところ鋭いよな。誰より俺の変化に気づく」
「……気のせいならいいけど」
「気のせいじゃないけどな」
陽斗は立ち止まり、空を見上げた。
「でも透には……まだ話したくねぇや。
なんていうか……整理できてない」
陽斗は強がるように笑った。
「とりあえず、今日はメシ食って寝れば大丈夫だって。
透は透で、自分のこと優先しろよな?」
その言葉の明るさが、逆に透の胸を痛める。
帰り道を分かれる頃には、空は群青色に変わっていた。
透は胸の内側を押さえながら、ゆっくりと家に向かう。
夕闇の中で、誰かの視線を感じた気がした。
気のせい――ではなかった。
校門の影から、静かに透を見つめる瞳があった。
その瞳は、底知れない闇の色をしていた。




