アインの告白
「透。
君の家族は……“コーラスに関わって死んだ”んだよ。」
その言葉が、風も音も奪うように屋上を支配した。
透の呼吸が止まった。
体温が急激に下がり、手先が震える。
「…………なにを……言って……?」
アインの表情は冷たく穏やかだった。
「君は『事故』だと思っている。
でもあれは事故じゃない。
“処分”だ。」
透の心臓が締めつけられる。
「お前……ふざけるな……
俺の家族は……事故で……!」
「いいや。
“感情系遺伝子保持者”の血筋は、
コントロールできなければ危険なんだよ。」
足元が揺れるような錯覚。
陽斗が透の肩を掴み支えた。
「透……落ち着け……!!」
「陽斗……」
声が震える。
透自身の感情が暴走しそうになるのを、陽斗の温もりだけが辛うじて止めていた。
凪が唇を噛み、絞り出すように言った。
「透……ごめん……
私、本当は……少しだけ知ってた。」
「……え?」
凪は透を見られずに目を伏せる。
「コーラスは、“危険な素質”を持つ家系を監視してた。
神代家は……その一つだった。」
透の胸に冷たい刃のような痛みが走る。
(俺の家族が……
監視……?
“危険”……?)
「じゃあ……あの事故は……」
凪は震えながら首を振った。
「事故じゃなかった。
透が小学生の頃、コーラスの“上層”が動いた。
君の家族は――
君の力を覚醒させないために処分された。」
透は視界が白く霞んだ。
「俺の……せい……?」
言葉が喉から漏れる。
陽斗が透の手を掴む。
「透!!違ぇよ!!
てめぇのせいなわけねぇだろ!!」
陽斗の声が、悲鳴のようだった。
アインは淡々と言う。
「神代家は“共鳴遺伝子”の純血に近かった。
だが、君以外は力が弱かった。
だから“芽”である君だけ残し、他は――」
「やめろ!!!」
透が叫んだ。
怒りでも涙でもなく、
言葉そのものが体の奥から零れた叫びだった。
「そんなこと……
そんな理由で……
俺の家族を……!!」
アインは表情一つ変えない。
「透。
君は特別だ。
“感情の根”に触れる能力者は数十年に一人。
だから守る必要があった。」
「守る……?
お前らが殺したんだろ……!!
どこが守るだ!!」
透がアインへ一歩踏み出す。
陽斗が慌てて透の腕を掴んだ。
「透!!やめろ!!」
「陽斗……離せ……!」
「離さねぇ!!
今のお前じゃ……心が暴れる!!
お前が傷つく!!」
透は陽斗を睨む――しかし、その瞳は今にも泣きそうだった。




