黒フードの本当の姿
黒フードが、まるで舞台の幕を下ろすように、
ゆっくりとフードを脱いだ。
「じゃあ――正体を見せようか」
透と陽斗と凪は息を呑む。
夕陽が差し込み、その顔が露わになった。
その顔は――
透より少し年上の、少年のような青年。
だが、その瞳は完全に“ヒト”ではなかった。
黒く深い瞳孔。
感情のない笑み。
美しいのに、冷たすぎる表情。
「僕の名前は――」
黒フードは胸に手を当て、微かに頭を下げた。
「《天城アイン》。
コーラスの“核心”だ」
(天城……)
その名字に、透の胸が鋭く痛む。
(……あれ……?
どこかで……聞いたような……)
アインは続ける。
「透。
君と僕は“同じタイプ”の能力者だ。
“感情の根”に触れられる……
ごく限られた遺伝子を持つ者だ」
「遺伝子……?」
「そう。能力は“遺伝”する。
君の力は突然ではない。
家系のどこかに、必ず“源”がある」
透の血の気が引く。
「まさか……」
「そう。
君の家系には“我々の仲間”がいた」
透は心臓が強く締めつけられるのを感じた。
(俺の……家族……?)
アインは唇の端を上げる。
「透。
君は“選ばれた血”だ。
僕たちと来い。
共に“感情の世界”の支配者となろう」
陽斗が透の肩を掴む。
「透……こいつの言うことなんて聞くな!」
凪も叫ぶ。
「透!!あんたは絶対に渡さない!!」
アインは感染するような笑みを浮かべた。
「さあ透。
君は“誰の隣に立つ?”」
透は息を呑んだ。
陽斗の手が熱い。
凪の視線が強い。
アインの瞳は底知れぬ深さを潜めている。
(俺は……)
透は拳を握った。
(俺は――)
その答えを出す寸前。
アインが囁くように言った。
「透。
君の家族は……“コーラスに関わって死んだ”んだよ」
透の世界が、一瞬で崩れた。




