アクトが残した“異物”
そのとき。
凪が急に険しい顔になり、周囲の空気を探るように目を閉じた。
「……透。陽斗。
まだ終わっていないわ」
「え?」
凪は地面――透と陽斗の影を指さした。
「アクトの影の残滓が……まだ微量に残ってる」
「なっ……!」
「影を辿れば……“アクトの本体がいた場所”まで行ける。
でも、それは“危険”の証でもある」
凪の声が低く響く。
「アクトは、ただの野良能力者じゃなかった。
あなたたちを試すような動きだった。
つまり――」
「つまり……?」
凪は息をつき、はっきりと口にした。
「アクトは《コーラス》の“尖兵”。
組織の本命は別にいる」
透と陽斗の背筋に冷たいものが走る。
(アクトは……ただの先兵……?
じゃあ本物の敵は……)
凪は空を見上げた。
「コーラスは“感情操作系”の能力者を集めている。
透、あなたと同じタイプの能力者を、ね」
透の胸が大きく揺れた。
「……俺を……?」
「あなたは特別なの。
“感情を読むだけでなく、共鳴し、相手を変える力”を持つ能力者なんて稀少すぎる」
「で、でも俺は……支配なんて――」
「透、謙遜じゃない。本気で言ってる」
凪の目は真剣だった。
「だからこそ、あなたは狙われている。
陽斗だけじゃない。
次はあなた自身が――組織の標的になる」
陽斗が透の前に立つ。
「透は俺が守る」
「陽斗……!」
「透がどれだけ特別だろうと、能力がどうだろうと……
俺は透を信じる。
透の隣に立つのは俺だ」
陽斗の言葉に、透の胸が熱くなる。
(陽斗……
お前はもう……その闇を恐れなくなったんだな)
凪が小さく笑う。
「……二人とも、本当に強くなったわね」
その笑みに安堵が混じった瞬間――
空気が“裂ける音”がした。
屋上の空間に、黒い“線”のような亀裂が走る。
「!!」
「透、陽斗……下がって!」
凪が二人の前に立つ。
亀裂の奥から、聞き覚えのある声が響いた。
「――なるほど。
二人で共鳴すると、これほどの力になるのか」
凍りつくような声。
「嫌いじゃないよ、その絆」
その声の主は――
黒フード(第二の能力者)
アクトを動かした“裏の指揮役”。
組織の中心人物。
亀裂から黒フードの姿が現れ、
彼の影からは複数の“眼”がこちらを覗いた。
「さあ透。
いよいよ君を迎えに行こうか」
透は本能的に陽斗の手を握った。
「……来たな」
「ふふ……ここからが本番だよ」




