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精神世界の終焉
光がゆっくりと世界から引いていく。
アクトが消えた後の陽斗の精神世界は、
まるで長い雨のあと初めて日が差し込む庭のようだった。
濁った色で満たされていた空は澄み、
割れた記憶の欠片も、静かに形を整えていく。
陽斗が透の肩に額をもたせかけながら、ぽつりと呟いた。
「透……
俺、もう……自分の心が怖くない」
透はゆっくりと陽斗の背中を撫でた。
「うん。陽斗は強いよ」
「いや……俺ひとりじゃ無理だった。
透が――お前がいてくれたから」
そう言って陽斗は顔を上げる。
その瞳には、いままで透が見たどの陽斗よりも深い“光”があった。
「透。
ありがとう」
その一言で、透の胸がじんわりと熱くなった。
(陽斗……ここまで来れたんだな……)
お互いが抱えてきた闇も弱さも、全部さらけ出した。
それでも隣にいることを選んだ。
“共鳴”は支配じゃない。
“共鳴”は、互いを尊重しながら繋がることだ。
透は小さく呟く。
「……陽斗。
戻ろう」
「ああ、透と一緒ならどこでも」
二人は手を離さないまま、光の出口へ歩いた。
世界が白く弾け――
現実の屋上へと帰還した。




