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影踏みのルミナス  作者: antild


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43/67

映し出された“最初の感情”

 “陽斗の心”の最深部。

 目の前の扉が開き、内側から白い光と黒い影が渦を巻きながら溢れ出す。


 透は思わず手をかざし、

陽斗の腕を掴んで踏ん張った。


「陽斗……!」


 陽斗の指先が震え、扉を押し返すように震える息を吐いた。


「透……ごめん……

 怖いんだ……

 この扉を開けるのが……」


「俺がいる。

 手、離さない」


 透がそう言うと、陽斗は泣きそうな顔で微笑んだ。


「透……ありがとう」


 そして――扉が完全に開いた。


 扉の奥は、どこまでも暗い空間だった。

 しかしその中心にだけ、ひとつだけ“記憶”が明確に浮かんでいた。


 ――中学一年、陽斗と透が初めて出会った日の放課後。


 透がひとりで校庭の隅に座り、本を読んでいた。

 誰とも話さず、誰とも群れず、

静かに佇んでいた“あの日の透”。


 陽斗の記憶の中の自分が、その光景を見下ろすように立っていた。


「これが……俺たちの最初の出会い……?」


 透が呟くと、陽斗は小さく頷いた。


「うん。

 この日、俺……お前を初めて見た」


 アクトの声が闇に響く。


「さあ、透。

 陽斗が“その瞬間に抱いた感情”を……

 見せてあげるよ」


 記憶の陽斗の胸の奥から、

黒い煙のような“感情”が浮かび上がる。


 その色は――

悲しみ、孤独、怒り……

だけではなかった。


 透の胸が強く鳴る。


(この色……俺、知ってる……)


 陽斗自身が口を開いた。


「透……俺な……

 あの日、お前を見た瞬間――」


 陽斗の声は震えていた。


「“見つけた”って思ったんだ……」


「…………え?」


「誰にも理解されない寂しさも、

 家族のことで胸が押しつぶされそうな思いも、

 俺が笑って誤魔化してるのも……

 全部、こいつは“同じもの”を抱えてるんじゃないかって」


 陽斗が震える声で続けた。


「透が……

 “俺と似てる気がした”んだ」


 透の胸が熱く震える。


(陽斗も……

 あの日、俺の孤独を……感じ取っていた……?)


 陽斗は自嘲気味に笑った。


「だからさ……

 俺、お前を見た瞬間……

 怖くなったんだよ」


「怖い……? なぜ……」


「お前に……心の奥を全部見透かされるんじゃないかって……」


 透は息を呑んだ。


「その恐さと同時に……

 “救われた”って思った」


 陽斗は涙をこぼした。


「こんなに弱い自分でも……

 透の隣なら……許される気がしたんだよ」


 透の喉が熱くなる。


 その瞬間――

陽斗が胸に手を当てて泣き叫んだ。


「でも怖かった!!

 透が離れたら、俺……もう立てなくなるんじゃないかって……

 だから透を見たとき、

 “安心”と“恐怖”が一気に押し寄せて……

 胸がぐちゃぐちゃになった!!」


 透の目に涙が滲む。


「陽斗……」


「透を信じたい。

 でも……信じたら依存しちゃう。

 頼りすぎて……ぼろぼろの心が壊れそうで……

 ずっと怖かったんだ……!」


 透の胸が痛みと温かさで締めつけられる。


(陽斗……そんな気持ちをずっと……)

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