映し出された“最初の感情”
“陽斗の心”の最深部。
目の前の扉が開き、内側から白い光と黒い影が渦を巻きながら溢れ出す。
透は思わず手をかざし、
陽斗の腕を掴んで踏ん張った。
「陽斗……!」
陽斗の指先が震え、扉を押し返すように震える息を吐いた。
「透……ごめん……
怖いんだ……
この扉を開けるのが……」
「俺がいる。
手、離さない」
透がそう言うと、陽斗は泣きそうな顔で微笑んだ。
「透……ありがとう」
そして――扉が完全に開いた。
扉の奥は、どこまでも暗い空間だった。
しかしその中心にだけ、ひとつだけ“記憶”が明確に浮かんでいた。
――中学一年、陽斗と透が初めて出会った日の放課後。
透がひとりで校庭の隅に座り、本を読んでいた。
誰とも話さず、誰とも群れず、
静かに佇んでいた“あの日の透”。
陽斗の記憶の中の自分が、その光景を見下ろすように立っていた。
「これが……俺たちの最初の出会い……?」
透が呟くと、陽斗は小さく頷いた。
「うん。
この日、俺……お前を初めて見た」
アクトの声が闇に響く。
「さあ、透。
陽斗が“その瞬間に抱いた感情”を……
見せてあげるよ」
記憶の陽斗の胸の奥から、
黒い煙のような“感情”が浮かび上がる。
その色は――
悲しみ、孤独、怒り……
だけではなかった。
透の胸が強く鳴る。
(この色……俺、知ってる……)
陽斗自身が口を開いた。
「透……俺な……
あの日、お前を見た瞬間――」
陽斗の声は震えていた。
「“見つけた”って思ったんだ……」
「…………え?」
「誰にも理解されない寂しさも、
家族のことで胸が押しつぶされそうな思いも、
俺が笑って誤魔化してるのも……
全部、こいつは“同じもの”を抱えてるんじゃないかって」
陽斗が震える声で続けた。
「透が……
“俺と似てる気がした”んだ」
透の胸が熱く震える。
(陽斗も……
あの日、俺の孤独を……感じ取っていた……?)
陽斗は自嘲気味に笑った。
「だからさ……
俺、お前を見た瞬間……
怖くなったんだよ」
「怖い……? なぜ……」
「お前に……心の奥を全部見透かされるんじゃないかって……」
透は息を呑んだ。
「その恐さと同時に……
“救われた”って思った」
陽斗は涙をこぼした。
「こんなに弱い自分でも……
透の隣なら……許される気がしたんだよ」
透の喉が熱くなる。
その瞬間――
陽斗が胸に手を当てて泣き叫んだ。
「でも怖かった!!
透が離れたら、俺……もう立てなくなるんじゃないかって……
だから透を見たとき、
“安心”と“恐怖”が一気に押し寄せて……
胸がぐちゃぐちゃになった!!」
透の目に涙が滲む。
「陽斗……」
「透を信じたい。
でも……信じたら依存しちゃう。
頼りすぎて……ぼろぼろの心が壊れそうで……
ずっと怖かったんだ……!」
透の胸が痛みと温かさで締めつけられる。
(陽斗……そんな気持ちをずっと……)




