光と影の衝突
屋上が白い閃光に飲まれた瞬間、
透の体はふわりと浮き上がった。
風の感覚も、地面の手触りも消える。
次に目を開いたとき、そこは――
陽斗の精神世界だった。
透の足もとは黒と白が入り混じる曖昧な空間。
空は歪んだガラスのように割れ、
陽斗の記憶がかすかな映像として浮いたり沈んだりしている。
「ここが……陽斗の心……」
陽斗が隣に立っている。
跡形もなく塗りつぶされていたはずなのに、
いまは透と強く繋がるような光を帯びていた。
「透。……怖いけど、行こう」
「ああ。陽斗、一緒に行く」
そして。
黒い霧を引き裂くように、影が現れた。
「ようこそ……僕の庭へ、透くん」
影潜りの能力者――アクト。
ここは“陽斗の心の中”でありながら、
アクトが侵入し、根を張り、
自分の領域のように作り替えた空間だった。
黒い影の触手が霧の中でうねり、
無数の“陽斗の記憶”を握りつぶしている。
幼い陽斗の笑顔。
家族の記憶。
透と並んで歩く放課後の記憶。
それらがアクトの影に触れるたび、黒い染みになって消えていく。
「やめろッ!!!」
透が叫ぶよりも早く、影が笑う。
「君が守れるなら守ればいい。
でも――“陽斗の心は壊れやすい”。
壊れる前に僕がもらってあげるよ」
陽斗が震えながら言う。
「勝手に……奪うな……これは俺の心だ……!」
「君の心? 本当にそう思ってる?」
アクトは陽斗の胸元へ指を向けた。
「陽斗。
君は“自分の心の形”をまだ知らない。
だから、奪いやすい」
その指先が触れた瞬間――
陽斗の影がぐにゃりと揺れて、
陽斗本人が苦しそうに胸を押さえた。
「やめろッ!!!」
透が陽斗を抱き寄せるように支えた。
陽斗の体は震えている。
「透……俺の心が……また、何かに引っ張られてる……!」
「大丈夫だ。絶対に引き戻す!」




