屋上の風の中で
夕暮れの屋上に吹く風は、どこか冷たかった。
フェンス越しに見える街は茜色に染まり、
遠くのビルの影が伸びている。
透と陽斗は階段を上がり、屋上に出た。
透はドアを閉め、鍵をかける。
誰かに聞かれたくない話だから。
「なあ透……そんな深刻な話なのか?」
陽斗は苦笑しながらフェンスに寄りかかった。
夕陽の光が彼の髪を黄金色に照らす。
(陽斗……)
透は胸が締めつけられた。
「……陽斗。
本当に、最近……変な気配とか感じないか?」
「気配って……そんな超能力者みたいな――」
陽斗は笑おうとしたが、ふと表情を曇らせた。
「……あるんだよ。実は」
「!」
「背中がずっと……熱いような、重いような感じがしてさ。
誰かが後ろに立ってるみたいで……振り返っても誰もいねぇけど」
(やっぱり……!)
透は無意識に陽斗の背中を見つめる。
影がゆっくりと揺れ――
透と目が合ったように形を変える。
(……第三の能力者……)
透の指先が強張る。
「透? どうした?」
「陽斗、お前の背中……」
「背中?」
陽斗が自分の背後を覗き込む。
だが影はすぐに“普通の影”の形へ戻った。
「……何もねぇぞ?」
透は歯を食いしばる。
(陽斗からは見えない……
つまり俺にだけ見える“異能の気配”……!)
その時――
凪からのメッセージが届いた。
『透、気をつけて。
第三の能力者の気配が、急激に強くなってる』
透は短く返信する。
『もう陽斗のすぐ近くまで来てる』
凪からすぐ返事が来た。
『透、逃がすな。
そいつは“影に潜る”』
影――
そこで透は気づく。
(陽斗の影に……“潜んでる”?)
透の背筋に冷たいものが走る。




