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揺らぐ影
夕闇の階段の踊り場で、陽斗の背中の影がふわりと揺れた。
透は反射的に息を呑んだ。
(今の……絶対に見間違いじゃない)
陽斗自身の動きでは説明できない。
影は“独立した意思”を持つように、ほんの一瞬だけ形を変え……
――透に向かって、微笑んだ。
寒気が背骨を走る。
(黒フード……じゃない。
これはもっと……静かで、冷たい気配だ)
透の足が無意識に後ずさる。
「透?」
陽斗が突然振り返り、心配そうに覗き込む。
その瞬間――影は完全に普通の影へと戻っていた。
「どした? 急に青ざめて」
「あ……いや、なんでも……」
だめだ。
陽斗には言えない。
(陽斗の影……“別の能力者”が触れてる?
黒フードじゃない……
第三の能力者……?)
凪の声が脳裏で響く。
「第三の能力者はまだ姿を現していない」
(でも――もう陽斗に接触してる)
透は拳をかたく握った。
(また誰かに……陽斗が狙われてる)




