陽斗の“本当の秘密”
陽斗が声を震わせる。
「透……。
俺ずっと……お前といると安心してた。
でも、それって――
お前の力のせいなのか……?」
透は言葉を失う。
陽斗は胸を押さえ、苦しげに続けた。
「……俺、気づいてたんだ。
小さい頃から俺は他人の“気配”に敏感だった。
怖いくらいに、相手の心の揺れに気づけた。
だから、透と出会ったときに……思ったんだ。
“こいつは普通じゃない”って」
透の肩が震える。
陽斗は微笑む――
寂しさを含んだ、本当の陽斗の笑顔で。
「それでも……
お前のそばにいると、胸の奥があったかくなる感じがして……
怖くても……離れたくなかった」
胸が締めつけられる。
「それって……俺の力のせい……なのか……?」
陽斗の質問は、透を刺す刃だった。
透は必死に首を振る。
「違う!
俺は……陽斗を支配したりなんて……!」
「でも今の俺には……それがわからない」
陽斗は痛みに耐えるように目を閉じた。
「俺の“透への気持ち”は……本物だったのか?
それとも……透の能力が作った偽物なのか?」
透は返せなかった。
たとえ偽物じゃないと感じていても、
それを“証明”できる言葉を透は持っていない。
黒フードが笑う。
「ほら見ろ。
陽斗はもう、“感情の空白”に沈んでいる。
ここを埋める方法は、ひとつだけだ」
透が顔を上げる。
「……ひとつ?」
「お前の能力が完全に開花したとき――
お前は陽斗の心を“塗り直す”ことができる。
愛でも友情でも恐怖でも、
お前が望む形に、陽斗を染め上げることができる」
透の顔が青ざめた。
「……そんなこと……できるわけ……」
「できるよ。
神代透。
お前の力は“支配”だ。
その真価を解放するだけだ」
陽斗の精神世界が大きく揺らぎ始めた。
黒い亀裂が彼の足元から広がっていく。
「透……
俺……怖いんだ」
陽斗が泣きそうに呟く。
「お前を信じたいのに……
信じるための“感情”がなくて……
どうすればいいかわからない……」
透は陽斗の肩を掴む。
「全部取り戻す!
陽斗の心も、感情も、記憶も……俺が取り戻す!」
陽斗の瞳に光が宿る。
「透……本当に……?」
透は涙をこらえて頷いた。
「支配なんてしない。
お前の心は……お前のものだ。
俺はただ……“本物の陽斗”を取り戻したい」
黒フードが低く笑う。
「じゃあ――証明してみろ。
支配せずに、陽斗の心を救ってみろよ。
それがお前にできるなら……の話だがな」
陽斗の心の世界が崩壊を始める中、
透は初めて――
自分の能力と真正面から向き合った。




