心の深層へ
透と陽斗の感情が触れた瞬間、
ふたりの精神世界が重なった。
暗闇の中に、無数の光の記憶が浮かぶ。
幼少期の陽斗の孤独。
陽斗が笑顔を身につけた理由。
クラスで孤立しかけたとき、透と初めて話した日の感覚。
けれど――
その記憶たちの中で、
透に関する“感情の部分”だけが黒く塗りつぶされていた。
陽斗が苦しそうに呟いた。
「……見えてる?
俺の……記憶の穴」
「見えてるよ」
透は陽斗の手を握った。
「陽斗。
俺は――お前の親友だ」
陽斗の瞳が揺れる。
「親友……?」
「そうだ。
お前が悩んだときは俺が支える。
俺が苦しいときはお前が助けてくれた。
何度も、何度でも……」
陽斗の喉が震えた。
「……そんな気がする」
「気がするんじゃない。
事実だ」
透は言い切った。
陽斗の心の中で眠っていた小さな光が震え始める。
しかしその瞬間――
精神世界の闇の奥から、冷たい声が響いた。
「――邪魔をするな」
透と陽斗が一斉に振り返る。
そこには、
黒いフードをかぶった“誰か”が立っていた。
声は若い。
だがその存在は、透の“読心”を拒むほど強い。
凪が言っていた
「喰感者とは違う干渉者」
とは、こいつのことか。
「陽斗の感情は……“俺のものだ”。
お前に返すつもりはない」
透の胸が凍りつく。
「……誰だ……お前」
フードの人物はゆっくり顔を上げ、
歪んだ笑みを浮かべた。
「透……
お前と同じ“感情操作”の能力者だよ」
そして――
「本当は気づいてただろ?
お前の力は“上書き”なんかじゃない。
お前の力は――
『感情の支配』だ」
透の心が激しく揺れた。




