透の絶望と、初めての怒り
「……誰だよ」
透の声は、これまでにないほど低かった。
「陽斗の心を……こんなふうにしたのは……誰だよ……!」
透の胸の奥で、怒りの感情が熱を帯びていく。
それは透が最も恐れてきた感情。
自分が乱れたとき、能力は暴走しやすくなる。
触れた相手の心を傷つけ、壊してしまう可能性もある。
凪は透の腕を掴んだ。
「透……落ち着いて。
あなたがその状態で陽斗の感情に触れたら――
陽斗の心が崩れる!」
「でも……このままじゃ……!」
透は唇を噛みしめ、目を閉じた。
(怖い……。
陽斗に触れるのが……俺は怖い……)
だが陽斗が苦しむ姿を見て、
透の中で別の感情が強く膨らむ。
“守りたい”。
その気持ちは、恐怖を上書きするほど強かった。
透は陽斗へ手を伸ばす。
「陽斗……俺、お前を助けたい」
陽斗は静かに透を見つめる。
その瞳には色がないのに、
どこか“泣きそうな表情”が浮かんでいた。
「……透。
俺……お前の顔を見ると……胸が痛い」
透の心臓が跳ねた。
「覚えてないのに……胸だけが……覚えてる」
陽斗は震えた声で続ける。
「透、お前のこと……大切だった気がする。
でも……理由がわからない」
透の手が、陽斗の頬に触れる。
その瞬間、世界が揺れた。




