暗い影を背負った背中
黒い影との遭遇から翌日。
透はほとんど眠れない夜を過ごし、重い頭を抱えながら登校した。
教室に入ると、陽斗がいつものように笑顔で手を振る。
「透! おはよう!」
明るく、軽い声。
しかしその笑顔の奥に……昨日より深い“影”があった。
透は胸の奥がじわりと痛む。
(陽斗……。やっぱり何か抱えてる)
陽斗の明るさは嘘じゃない。
けれど、その奥に“ひりつくような孤独”が沈んでいるのを、透は感情の流れで感じてしまう。
「透、どうした? 寝不足か?」
「……ちょっとね」
「まーた夜更かしゲームでもしたんだろ? お前弱いくせに」
「そんなことしてない」
言葉では返すが、陽斗の軽口に笑い返す余裕がない。
陽斗はじっと透を見つめた。
「……透、本当に大丈夫か?」
その一言に、透の胸がざわつく。
陽斗の心の奥――そこに “何かが入り込んだ痕跡” のような揺れがあった。
黒い影の余波か、それとも別の能力者か。
陽斗自身の心が歪み始めているのか。
透は思わず口を開きかけた。
「陽斗……最近、何か――」
「なに?」
透は言葉を飲み込む。
感情を“読んでしまった”ことを、陽斗に悟られるわけにはいかない。
陽斗が傷つくのが怖かった。
「……いや、なんでもない」
陽斗は一瞬だけ寂しそうな目をした。
「透ってさ……ときどき、めちゃくちゃ遠いよな」
その言葉が、透の胸に刺さった。




