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平日のこんな夜中に何をやっているのやら…。
無論、予習や復習、宿題をやるようになる訳でもなかったし。但しやがてそれも、「テレビの音が聞きづらいなあ」とラジオにイヤホンを差し込んで聞くように(聞きもしないし聞いてもいやしなかったのではあるが。そんな退屈でしかないものの音量を垂れ流すのは、親にも弟にも迷惑だと思うようにもなった)なり、まもなく、自分の耳にイヤホンを嵌めなくなった。ただそれでも、ラジオ講座は聞いていないまでも流しているのであるのだから、私の唯一の「家でやった勉強」ではある。こんな具合になった頃には流石に親も諦めてくれていた。「やっぱりこの子には無理だった」とでも妥協してしてくれたのだろうか? いまだに直接聞けてなどいないのだけなのだけれど。この間に、私は思案を巡らせ、「睡眠学習というのはどうだろうか? 通販でそれ専用の枕が売っていた広告を見たくらいだし、寝ているときに聞いていれば、聞いていることにすれば、ラジオにイヤホンさす必要もなく、何だか知らないうちに勉強時間稼げるし」と考え、実際試してみたのだが、これは三日ももたなかった。寝る時に何だかわからない言葉でがちゃがちゃ言われるのは――それがネイティブの、それがたとえアメリカンではなくてクイーンズであっても――やはり寝つくには煩わしく鬱陶しかったのである。単純に「うるさいなあ。これじゃ眠ないじゃない」と思った。なので、このアイデアは速やかに却下した。他のクラスメイトが私の家庭での学習時間の実態を知ったら一体どんな顔、如何な反応をしたことであろう? それとも、他の級友は級友で、私とはまた違う“特例”とか“特権”のようなものが担任教師によって認められていたのだろうか?