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登校途中に繋がった異世界からやんごとなき方として戻ってきてしまった話  作者: kaioosima
第一章 パイが増えても中身がメリットだけとは限らない
8/50

008 言論と思想は自由な方が良いのに…

今回はこういう系の危急に陥った場合の群集心理を作者の妄想で、始めのうちは気分を害するかもしれない形で描写しているのでご注意ください。

 ○2023年4月7日昼 日本国 鹿児島県南部 海士臣島(あまとみしま) 海士臣市 ループ橋付近集落○


 ループ橋に出現した円門(サークル)を中心として生じ、現在も拡大中の異世界との連結による混乱は今も海士臣島各地で続いていた。


「ひゃっほー! 他の星系に出れないような惑星にしちゃー中々羽振りが良さそうじゃねーか!」

「人も物も他所へ良い値で売れそうなのがたくさんあんぞ!」

「どういうわけかあのクソ学園も来てっからミッドガルドや帝国とか面倒なのが来る前に奪っとけ!」


 特に災難の放出点となっているループ橋からは、今度は大量の宇宙海賊が異世界から現れてきており、それに人々は恐慌状態に陥っていた。


「な、何だこれはぁぁ!?」

「映画の撮影か!?」

「馬鹿野郎! 映画の撮影なんかで普段使う道路にクレーターが出来るか!」

「う、海の向こうのあの国とかと遂に戦争にでもなったか!?」

「馬鹿を言え! あの手作り銃であの世に逝っちまった元総理のあの野郎やその盲目支持者共の言葉なんざ軍拡とかで金儲けしたいための口実に…うわぁぁああ!?」


 各地で人々は逃げまどっているが、宇宙海賊たちは様々な方法でその人々を背から捕まえて母船に引きずり込んでいく。

 その様子は市の中心部から戻ってきたミカエルと光代も壊れた家の瓦礫から盗み見ていた。


「…あれ? 何か市の中心部に出張ってた方の宇宙海賊はもう“享楽の戦女神女王”に降伏したのに…何だかこの辺りはまだ気づいてもいない感じだぞ。会長の方はこっちの学校に行く向こうの学園の方の混乱がまだおさまっていないでしょって上手く戻したのに…」

「まだ市の方の民間の方々の保護や残党調査からしてまだここまで手を伸ばしていないのでしょう。認識干渉の結界を張られてここの海賊達には既に艦隊ごと来ている事には気付かれないようにはしていたようですし…今は安定していますけどいつ塞がるかわかりません。まあ…あの方の本音的には放っておいた方が楽しい事になりそうだからってこともあるでしょうけど…」

「どうすっかなぁ…下手に僕が出向いて説得しても余計に周りにとっては火に油を注ぐも同然のことをしそうだし…?」


 自身の地元の惨状にミカエルは何か知恵を振り絞ろうとするが、そこで彼の頭を更に悩ませる事態が発生する。


「…う、うーん…まさか異世界と繋がったその日に…今度は宇宙海賊に連行されるなんてー…」

「あなた、今この時にそんな話のネタに使えそうだなーって顔はしないでよ」

「おい、無駄口を叩かずにさっさと船に乗り込め」


 ミカエルのこちらの世界での父ダニエルと母マリアもまた宇宙海賊に連行されていたのだ。


「…仕方ない…。周囲の思考を読んでみたけど…父さん母さんを運び入れようとしているあの船の海賊たちはこの中では一番穏当そうだし…光代、伝言役はたのんだよ」


 それを見たミカエルは溜息を吐きつつも瓦礫から身を出した。


「…先生…まさか…」


 光代は師の行動に微妙そうな感じで見慣れた笑みを浮かべるが、彼女が止めに入る前にミカエルはやや慌てたふりをして海賊たちの前に飛び出した。


「む? まだ隠れていたやつがいたのか!?」

「ま、待ってください! 父さんと母さんを連れていくくらいなら僕を連れていってください!」


 それに気付いた宇宙海賊たちが銃口などを向けると、ミカエルはこうした場面なら少しはいるだろう家族を救うべく勇気を振り絞った少年の振りをした。






 ○2023年4月7日昼 日本国 鹿児島県南部 海士臣島(あまとみしま) 海士臣市 臣島高等学校上空○


「……宙域巡回中に来てみれば、まさかこんな数奇な星を見つけられるなんて…人生に飽き過ぎなくてよかったわねぇ…」


 ミカエルが宇宙海賊たちに捕まった頃、彼が今月に通うはずだった高校の上空に浮かんでいるその巨船の艦橋で、一人の女性が周囲に浮かぶこの島の光景の映像に興味深そうな笑みを浮かべていた。

 植物の樹木や葉をモチーフにした意匠を施されて深緑色に輝く素材で作られたトゥニカ・マニカタを思わせる露出度の低い女性用衣装を着ており、見えている顔は髪を後ろに結い上げて秀麗な額を晒し、雪解けで生じたばかりの済んだ清流を想わせる水色の瞳で明瞭な美貌をしていたが、肌艶からしてまだ30代入りたてと思わしいがその雰囲気には数千年生きてきた樹木が生い茂る森のような深みのある大きな存在感があった。

 何より、その耳はミカエルと共に円門(サークル)から姿を現したハイディナと同じ、この世界で俗に言う“エルフ耳”であった。


「リベラシア様、我が艦リーヴェラ・フィルダフィアのこの空間への空間魔力係留が終わりました」


 その船リーヴェラ・フィルダフィアの艦橋で作業している同じエルフ耳の乗組員たちが続々と報告を上げ始める。


「突発性空間連結異常に伴って流れ込んできた悪性霊質生命体の現地市中へ拡散した分の掃討は終わった模様です」

「こちらまで潜行していた海賊たちは既に投降を表明しています」

「リベラシア様、現地の警察組織らしき人々が集まって降下しているわが軍の兵士に接触しようとしているようですが…?」

「続けて現地の都市の中心部と山地を挟んだ付近にある、現地の軍事組織に出動の動きが…」


 そうした周囲から上がってくる報告を上手く処理しながら映像を楽しそうに見続ける女性リベラシアだが、そこで彼女の踊る気持ちを押し下げる報告が寄せられてきた。


「リベラシア様、地上の方から我が艦に収容を求める緊急信号が発せられています。帝国の皇室補佐官のものです」

「何ですって? ちょっと誰のものなのか映像は出せる?」

「はい、こちらです」


 その報告にリベラシアが口元を少々への字にすると、彼女の眼前にその緊急信号を寄せてきた人物の顔が空間映像で映し出される。


『…あーーー、申し訳ありません女王陛下…我が国の神皇陛下が…』

「…はーー、やっぱりあなたねー。その様子だとまた()()か~…」


 眼前の映像に映し出されたその苦笑している光代の姿に、リベラシアは先ほどまでの心が弾んでいた気分は急速に鎮静化して詰まらなさそうな声を上げた。






 ○日本国 鹿児島県南部 海士臣(あまとみ)島 海士臣市 ループ橋付近集落上空 某宇宙海賊船船内○


 光代が新たに異世界よりやってきたリベラシア達と接触していた頃、カールソン家は自分達が暮らす集落を占領した宇宙海賊の一隻の貨物室に収容されていた。


「あんたねぇ! 以前にテレビに出演していた親父が日本は昔からの状態を変えずにいれば戦争にもテロにも巻き込まれることはないって言ったじゃない!」

「だが現実はこんな戦争にもなってんじゃねえか!?」

「そ、それはぁ…」

「ふ、普通こんな戦争みたいになるなんて思わないじゃないですか!」

「そ、それを言うなら見てください! 自衛隊だってこの島を守るためとか何とか言ってたくせに未だに何もしていないじゃないですか! そもそもあんなのがこの島に来たから怖くなった周りの国の人々がこんなに~!」

「普段散々に自衛隊とかそれ支持してる連中に戦場が出来たら真っ先に行くべきッて言ってんだろ! 向こうも日本語話してんだから自慢の話し合いで平和的に解決するよう行けよ!!」

「武力では解決できないから話し合いで解決しろってのがお前らの常套句じゃねえか!」

「な、何よ! あんた達だって普段あれだけ戦前美化するようなこと言ってるくせしていざこんな時になったらうまいとこ逃げようって本音が見え見えな言動じゃない!」

「だからー今ここを攻めているのは隣のマルクス主義政党が治めてる国とかじゃなくてー…!」


 その中で相当数の人々が口論を繰り広げており、状況への理解が追い付けていないのでこの島周辺の国際状況などと結び付けて誤解している内容もあった。

 それを周りの人々は不安や呆れなど様々な思いを宿した眼差しで見守っていていた。


「…うーーん、4年前に自衛隊の基地が出来てから島のあちこちでちらほらこういうライトかレフトのどっちかだなーって人は増えてきていたけど…現実でこんな風にヤバくなると色々人に知られたくない…と言うかマスコミとかの多くが撮っても無かったことにしようって言う光景が色々と…」

「息子よ今ここでそんな事を言うんじゃない。本当に大丈夫なんだろうなこの宇宙船の海賊達は?」


 カールソン家も口論を見守る人々に混じっており、ミカエルはインターネットの動画サイトでもなかなか見ない内ゲバ丸出しの光景にしみじみとしつつも何処か嫌な意味で見慣れている風な言葉を漏らし、父から注意と質問を浴びせられていた。

 ちなみに、周囲にカールソン家の密談はミカエルが張った結界で、自分達と同じように怯えて今後の身の振りに付いて相談し合っているようにしか聞こえない。


「…あー多分大丈夫、ここの人達…全く殺しをしないってわけじゃないけど…、どっちかって言うとあの飛行艇乗りの偶蹄目の顔をした主人公のおっさんに軽くあしらわれた空賊みたいな気性の人達っぽいから…じゃー、今後の算段だけど…」


 ミカエルを中心にカールソン家が話し合いを進めている間も、誘拐された人々による内ゲバは続いていたが、それを見て海賊達も色々悪巧みを考え出していた。


「…色々な人質誘拐や身代金事業をしてきましたけど…ここまで酷い内ゲバをする連中も珍しいっすねぇ…」

「そうだなぁ、上手くすればいい小遣い稼ぎも出来るかも…客の連中だって本物と偽物の区別はつかねえだろうし…」


 民間人達には聞こえないように海賊たちは小声で話し合いをしていくと、ギッと修羅場を潜ってきた悪党が出せる鋭い表情で人々を見渡して大きく口を開く。


「グダグダ喧しい事ばっか言ってんじゃねえ! 静かにしねえと船底を開いて下のアスファルトの地面に叩き落として潰れたトマトみたいにすんぞ!」

「ヒ! ヒイ!?」

「よーし静かになったな! 良い子だなーおい! それに免じてお前達にはここから解放されるチャンスをやろう!」


 大人しくなった人々を見て機嫌を良くした風に顔を変えた船長は、彼らと自分達の間に指先から出した魔法の炎の噴射で床を円状に焦がした。


「今ここで描いたこの円の中にお前達の中から代表者を一人選んで入れろ。そいつが俺達とゲームをして勝てたらそいつとそいつにとって最も大事な一人は解放してやる。但しー失敗した場合はその代表が選ぶ最も嫌そうな奴がこの場で()()となってもらう。但しー負けた代表が自ら落とし前を付けるってなら、新たな代表を選んで仕切直しにするだけだ。ちなみに代表はお前達で決めろ」

「「「「「!!!!!!?????」」」」」


 それはこの手の大量誘拐系のネタを用いた作品にはよく出るデスゲームの誘いで、聞かされた人々は一斉に戦慄を覚えて顔を青ざめさせた。


「船長ー、良い具合にビビってますよこいつら-。良い絵が取れてますぜー♪」

「ぐふふふ、そうかそうか…まー連中がやり過ぎそうになったらこっちで殺るフ…!?」


 宇宙海賊たちはそれに満足げな表情を見せて小声で本音を口に漏らしたりするが、それはある人物のある行動で呆気なく途切れる。


「………………」


 放っておけば人々が押し付け合おうとしただろうその代表(いけにえ)に、立候補と書かれたタスキを付けて挙手をした状態でミカエルが無言にてデスゲームへの代表の志願を表明したからだ。

今回、何種かの人々の気分を害するかもしれない描写が出ましたけど、作者はこの国はまだ曲がりなりにも言論の自由があると信じているたちなので、現実にて方向問わずに色々な意味で名を馳せている方々の主張に比べれば普通の範囲だと考えています。

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