044 勇者はその他と異なる特徴とかが多いけど…
今回もある作品で有名な勇者の特性にあやかったパロディが多いです。
○2023年4月19日正午(神訂暦6015年4月19日正午) 日本国 鹿児島県南部 海士臣島 海士臣市歌是 間湊町○
学院での建物の修復や地盤強化作業における休息中での昼飯タイムを邪魔されて数分後、ミハイルは光代を連れて学院の許可を得て海士臣で港に近いある区画のある店の前に来ていた。
「よし、そっちもついてきているな…」
「……はい…」
「あれ? 何かリサイクル屋の〇ルタニ…じゃなくてカドタニの前に金髪の綺麗な子が二人いるけど?」
「何かあの異世界と繋がってきたって言う学院の制服を着てる男の子、何か〇ateの〇SPゲーム作品に出てた子に似てない? 髪の色は違うけど」
「黒い服に大剣担いでる女の人、何か〇Fに出てなかった? たしかF〇の七作目に出てた人に似てなくない? 何かコスプレ?」
そのミハイルの背後には落ち込んでいる様子のクラウディアの姿もあり、事情を知らない周囲はよく似たコスプレイヤーを見ているような感じだったが、そうした周囲にお構いなくミハイル達はリサイクルショップのカドタニ海士臣店に入る。
「あ、あのーミハイルさん…僕たちはここでなにをすればー?」
その店舗に入ったところで、神訂暦世界における当代正式勇者らしいクラウディアの仲間で、水色の髪をして魔術は回復系も攻撃系などほぼ全般が高ランクに使えるので“大導師”と言う魔術師の高ランク称号を得ているロックィーナがおどおどした様子で尋ねる。
「だから学院で聞いたようにどうせ向こう側で何故か怪しまれることも通報されることもせずに適当な民家からゲットしてきた金貨があるだろ。ここには金製品とか貴金属に宝石類の買い取りコーナーもあるからそこで換金して、そっちが焼いてしまった昼の弁当やアイスクリームの弁償をするんだ」
「ぼ、僕らはもう民家とかから無断で持って言ったりはしてませんよ!」
「それ、逆に言えば先にお願いして持って行ったりはしてませんよね?」
「あ、光代さんその通りで―――」
「もっと質が悪いだろそれ!?」
「―――いイイィ痛い!? 後衛系魔術師にアイアンクローは止めてええええミハイルさああああああああん!」
「そ、そうです! 今月はまだ人々にお願いして持って行ったりはしていません! 今回のはジブラルタル学院の中へ時空間異常の影響で流れて来た感じな未発見の遺跡を見つけてそこで発見した宝箱の中の満載してった金貨がほとんどです!」
「『そ、そうです! 今月はまだ人々にお願いして持って行ったりはしていま…』これさあ、学院にある交番に持って行けば無断侵入及び盗掘の証拠になるよね?」
「すみませんすみません! 帝国側でだとしても勇者パーティーが犯罪で捕まったニュースなんて洒落にならないんでその魔術フォーンみたいなスマホってこっちの機械で撮ったその映像はガチで消してください! 今回は以前の冒険の報酬で得た金貨がありますからそちらで払いますので!!」
店内に入っても周囲の視線などお構いなしで勇者パーティーを(ほぼ自業自得だが)ミハイルは締め上げる。
「おい、お前…こんなところでまで何やってんだ…?」
「あ、宗一、実はー…」
そんな周囲に振り撒かれる迷惑を止めたのは、微妙そうな表情を浮かべた友の姿で、ミハイルは少し安堵した表情を浮かべて事情を説明する。
「…何かお前が今の姿になってから色々とファンタジーや異世界に対する幻想やら憧憬やらがぶち壊しにされていってるぜ…」
異世界との連結以後の絶える気配のないSFファンタジーの夢を踏みにじる現実の数々をまた新たに教えられ、宗一は乾いた笑みを浮かべるほかなかった。
「いや、そんな僕が子供の夢を片っ端から壊していく諸悪の根源みたいな顔をされても…と言うか宗一は何で平日からこんなところに?」
「お前の学院含めてループ橋集落一帯に発生した地震やら地盤崩壊でうちの学校も被害が出たからまた急な休校になってな。それで俺の家の家電もいくつか壊れたからかここで買って来いってお袋に頼まれたんだよ」
「あー、そうだった。じゃー僕らもあの地震で家具とかのいくつかが壊れたっけ。ちょうどいいからこの勇者パーティーの合法範囲内金貨の換金で出た分で新しいのを買おう」
「ちょっと!? ミハイルさんの地球側での実家の被害と今回のこっちは関係ないですよね!?」
「ごちゃごちゃやかましい! 元はと言えば向こう側の銀河系でお前らがあの向こうの唯一神教系大勢力の裏側組織にはめられてあの危なっかしいテロリストを知らない内に招き寄せて時空間異常暴走テロの原因を作ったのが原因だろ…って人が説教してる前で〇ラクエの商人みたいにロープや溶岩とかでも平気で出来るからって店内のタイルを相手に穴掘りなんかするなー!」
「ひいい!? すみませんすみません! 何かこの店内の床のあちこちから怪しい気配を感じとったんでー…えってァアアアア! ターバンを取らないでー!」
「あ! 何か五百円って彫られてて銀色に輝く地味に高そうなのがはがれた床のタイルの裏にあった―――」
「だからお前も勇者のくせしてさり気なくネコババしようとするな!」
「―――ってあああ! もげるもげる! ヅ…じゃなくて髪がもげるから掴まないでええええええ!」
そして、宗一が加わってもSFファンタジー世界の現実はまざまざと店内で公開されてしまう。
「ちょ、ちょっと何なのよあのコスプレしてる人たち? あんなに騒いでー…」
「いやー、もしかして話に聞くあのループ橋で繋がった異世界から来たって人たちじゃない?」
「待って、この前も町の中を向こう側から来たなんか大きな動物が街中で暴れたりもしたから危なくない!?」
当然、近日まで表向きは魔術とかそういった要素は空想の産物とする世界の中で生きてきた周囲の人々はそれを訝しみ、異世界との連結後の混乱の数々もあって恐れがまた生じ始める。
(…まさかこんな不慮の時空間異常現象事故で前世を過ごしていたこの世界へ再び戻って来れるなんて…! 俺達をこの島へ勝手に連れ込みながら邪魔者扱いしだした人間どもに復讐してやる…!!)
それ故に、店内で並んでいる家具の影に、獣毛のような分厚い毛が身の各所に生えて、ミハイル達と同じ学院の制服を着ている怪しい人物が恨みと憎しみを宿した双眸を浮かべていることに、この場で気付けるものはまだいなかった。
次回は、作者の地元で今年の時事ネタにちなんだ新たな話の流れが生じる予定です。